1 宇都宮氏、当選

 昨日行われた日弁連会長選挙の再投票で宇都宮氏が当選し、次の日弁連会長に内定しました。前回の投票では、会派が支持する山本氏と、そのような支持基盤を持たない宇都宮市が引き分けたわけですが、今回の再投票では、宇都宮氏が総得票数でも山本氏を上回りました。

 この結果は、ある意味多くの弁護士が予想していたのではないかと思います。
 そもそも前回の投票で宇都宮氏は、42単位弁護士会で勝利するという圧倒的な支持を地方から得ました。総得票数では山本氏に及びませんでしたが、わずか900票程度の差です。山本氏が地方の単位弁護士会の支持を得て逆転勝利するよりも、総得票数で宇都宮氏が山本氏を上回るほうが現実的です。再投票の結果、総得票数でも宇都宮氏が上回り、今回の当選となったわけです。前回の投票結果を踏まえると、そんなに意外ではありませんでした。再投票を実施すれば、動く票は浮動票であって、派閥の票ではありませんから。
 おそらく、弁護士会の会派が擁立していない弁護士が日弁連の会長になるのは初めてではないでしょうか。その意味では確かに画期的だとは思いますが、私の分析するところでは、宇都宮氏は決して改革路線の人ではありません。司法試験の合格者を削減する方向の考え方を持っているわけですから…。

2 何が地方の弁護士を動かしたのか

 今回の選挙の最大の争点は、弁護士人口問題でした。
 政界や角界でも、”Change”が実現したわけですが、法曹界で実現したChangeは、会派が擁立していない弁護士が当選したという点だけ。宇都宮氏の政策路線は、むしろ時代の変化に逆行するものです。
 今、地方の弁護士たちは、昔の古き良き時代を懐かしがっています。法曹界も世の中の改革の波にのまれ、様々な改革が目白押しの激動の時代を迎えたわけですが、地方の弁護士はこの変化についていけてません。
 地方の弁護士は、このような時代にあって、「食べていけるのか」本気で心配していると思います。東京の法律事務所が地方にも進出するようになり、また、広告活動も解禁され営業努力する弁護士とそうでない弁護士の差が歴然としてきました。
 今回の選挙の隠れた争点は広告問題です。大規模な広告活動で地方の弁護士は東京の弁護士に仕事を奪われ、大変な死活問題となっています。私の知っている何人かの弁護士も、「広告を何とかしてほしい」という理由で宇都宮氏に投票すると語っていました。
 この広告規制の強い要望は、合格者削減と根っこではつながっています。要は、競争を制限したいという意味では同じですから。

 このような地方の弁護士の期待を背負って、宇都宮氏が、弁護士業界の既得利益をどう守るのか、今後の動向が楽しみです。