弁護士  日 向 祥 子


 

前回(2010216日)、倒産手続きにおいて、双方未履行の双務契約がどのように扱われるのかについて少しお話させて頂きました。

今回は、双務契約のうちの請負契約について、倒産によってどのような影響を受けるのか、まずは注文者が破産した場合について検討してみたいと思います。

 

請負契約は、注文者が請負人に対して仕事を依頼し、請負人がその仕事を完成することを目的とする双務契約です。

請負契約の報酬は後払いが原則ですので、注文者が請負契約の途中で破産した場合、その請負契約は、多くの場合双方未履行双務契約として破産法53条の適用を受け、管財人が解除または履行の選択をするように思われます(破産法531項)。しかし、この原則的処理は、民法6421項によって修正を受けます(最判昭和53623日(金法87529頁))。

以下、場合分けして考えてみましょう。

 

   X(破産管財人)
       |

       |
      ②破産 ←——-報酬債権 仕事の結果

    A  ——— Y   ○  

  (注文者)①請負契約(請負人)

 

Ⅰ 請負契約が解除されなかった場合

○請負人の報酬債権

 まず、破産手続開始後にされた仕事に対応する報酬は、財団債権となり破産財団から優先的に弁済されます(破産法14817号類推、151条)。

 破産手続開始前の仕事に対応する報酬については、争いはありますが、報酬請求権全体が不可分であることから、同じように財団債権とする説が有力です。

○仕事の結果の帰属

たとえば、建物建築を目的とする請負契約の場合、完成した建物の所有権の帰属は、特約がなければ、主たる材料の供給者がいずれであるか、請負代金の主要部分が支払われているかなどの要素によって、請負人、注文者のどちらも所有者になりえます。

 

Ⅱ 請負人が請負契約を解除した場合

○請負人の報酬債権

上述したように、請負人の報酬は後払いが原則です。しかし、注文者が破産したのに、請負人は仕事を完成させなければ報酬を請求できないというのでは、請負人に酷です。

そのため、請負人保護の観点から、請負人は、すでにした仕事の報酬とその中に含まれていない費用の請求権を、破産債権として行使できるとされています(民法6421項後段)。

すなわち、破産財団から配当を受けることになります(破産法193< /span>1項)。

○仕事の結果の帰属

 上述のように請負人の報酬債権を保護する反面として、すでにされた仕事の結果は注文者の破産財団に帰属することとなります(上記判例)。

 結局、解除は未履行部分についての一部解除と同じといえるでしょう。

 

Ⅲ 管財人が請負契約を解除した場合

○請負人の報酬債権

Ⅱに加え、解除による損害賠償権も破産債権となります。

この場合の損害賠償の内容は、請負人の仕事を行ったとすれば得られたであろう利益(たとえば、建物を建築する請負契約で、完成した建物を転売する契約が成立していて、転売利益が得られる予定だったなど)です。

○仕事の結果の帰属

 Ⅱと同じです。

 

 このような処理では、仕事が完成間近なのに破産管財人が請負契約を解除した場合に、非常に不公平な結果になる可能性があります。

なぜなら、請負人が出来高分の報酬債権や損害賠償請求権を破産債権として破産手続に参加しても、ごく僅少な配当しか受けられない可能性が高いからです。それなのに、注文者は新たな業者へ残りの工事を発注し、わずかな支出で建物を完成させることができてしまうのです。

このような場合には、解除権の行使が濫用であるとして、争う価値があるのではないでしょうか。


以 上