前回、倒産解除特約の有効性についてのお話の中で、リース契約のユーザーが民事再生手続開始申立てをした場合の手続の流れとリース業者の権利行使の関係について、私見をお話させていただきました。
その延長で、今日は、ファイナンス・リース契約のユーザーが倒産した場合にリース業者の未払いリース料債権はどうなるのか、会社更生手続や破産の場合について考えてみたいと思います。
■会社更生手続の場合
参考判例:最高裁平成7年4月14日判決(民集49巻4号1063頁)
「いわゆるフルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約において、リース物件の引渡しを受けたユーザーにつき会社更生手続の開始決定があったときは、未払のリース料債権はその全額が更生債権となり、リース業者はこれを更生手続によらないで請求することはできないものと解するのが相当である」
このように、平成7年判決は、リース業者の未払いリース債権は更生債権となることを明らかにしました。すなわち、未払いリース債権は更生手続の中で弁済され、更生計画により縮小的変更を受けるということです。
この判決は、未払いのリース料債権が更生債権であると判断しただけで、リース業者を会社更生法2条11項の更生担保権者に準じて扱うべきか判断していません。しかし、前回お話した平成20年12月16日判決の補足意見は民事再生手続の中でリース業者を担保権者として扱っていますので、会社更生手続においても更生担保権者として扱われる可能性が高いように思われます。
しかし、会社更生手続においては、担保権もまた手続に取り込まれ、手続外での自由な権利行使はできません。個別の権利行使は禁止され、担保権の実行や留置権による競売もできず、更生手続開始時に更生会社の財産に対しすでにされている担保権の実行や留置権による競売は中止します(会社更生法50条1項)。担保権の実行の禁止が解除され、担保権の実行、目的財産の換価が行われても、更生担保権者に配当・弁済することはできず、更生担保権者は更生計画による弁済を受けるにすぎません。
リース業者としては、リース契約の担保の実質を活かすことができず、悔しい思いをすることになりそうです。
■破産の場合
平成7年判決は、フルペイアウト方式によるファイナンス・リース契約について、これを双方未履行の双務契約と解さないことを前提に、未払いリース料債権を共益債権ではなく更生債権であると判断しています。
この考え方を敷衍すれば、破産手続の場合にも、フルペイアウト方式のリース契約に関しては、双方未履行の双務契約ではないとして破産法53条の適用が否定されることになります。
破産法53条の適用がないとすれば、リース会社がユーザーに対して有している債権は破産債権となり、リース業者には、別除権者としての地位が与えられると思われます。
すなわち、リース業者は、別除権の行使としてリース物件の取戻しとこれに基づく残リース料の精算を行い、なお残リース料債権があれば、破産債権としてこれを行使する、具体的には、破産債権として届出をし、調査・確定の手続を経て、確定した債権に基づいて、配当の形で破産財団から弁済を受けることになります。