今回も非公開会社を前提に、新株予約権(3)に引き続いて、新株予約権についてご説明したいと思います。
1 株主総会から取締役会への委任総論
新株予約権の発行について、株主総会から取締役会への委任は、実務上、よく行われているのですが、この委任手続は実務上問題が生じやすい場面ですので、注意が必要です。
株主総会特別決議によって以下の事項を定めた場合、新株予約権の発行を取締役会へ委任することができます。なお、この委任は当該株主総会特別決議の日から1年間のみ効力を有します。
①新株予約権の内容及び数の上限
②無償とする場合はその旨
③有償の場合は金額の下限
このように、株主総会特別決議によって、ほぼ全てのことを決める必要があり、取締役会への委任可能な範囲は極めて限られています。
特に、新株予約権の内容は株主総会特別決議によって定める必要があり、その内容を取締役会へ委任することはできないとされていることに注意が必要です。すなわち、取締役会は、発行する新株予約権の数や、その価額ぐらいしか決められないということになります。
以上を踏まえて、委任を受けた取締役会によって、複数回の発行は可能か?といったご質問を受ける場合がありますが、もちろん可能です。
そのため、実務上は、例えば、株主総会特別決議で新株予約権の数を200個を上限として決議し、1回目の取締役会決議に基づいて100個発行して、2回目の取締役会で残りの100個を発行するといった運用がなされております。
2 新株予約権の行使期間の委任関係について
新株予約権を行使できる期間である新株予約権の行使期間を、株主総会特別決議によって、どのように定める必要があるのか?といった問題があります。
例えば、「平成21年1月1日から、平成31年12月31日までの間で、当社取締役会が定めた期間とする。」との定めで登記は受理されるのか?といった問題については、登記は受理されないという見解が出されております。
理由は、原則論に戻ることになり、株主総会は取締役会へ新株予約権の発行を委任する場合であっても、新株予約権の内容は株主総会で定める必要があり、取締役会へ委任することはできないとされているためです。
新株予約権の内容には、新株予約権の行使期間が含まれていますので、新株予約権の行使期間を株主総会の特別決議によって定めるにあたっては、取締役会の裁量を入れない客観的な期間を定める必要があると考えられています。
では、どのように定めるべきかという問題になるのですが、通常は、例えば「平成21年1月1日から平成31年12月31日」といったように明確に定める場合が多いです。
ただし、新株予約権の割当日、すなわち発行日の決定は取締役会へ委任することが可能とされています。そこで、「新株予約権の割当日(発行日)から●年間」として定めることが考えられます。
以上