今回も非公開会社を前提に、新株予約権(6)に引き続いて、新株予約権についてご説明したいと思います。今回は、会社法上のその他の留意点等についてご説明したいと思います。

(1) 発行可能株式総数との関係

発行可能株式総数において、未発行枠を確保しておく必要があります。

そもそも、株式会社は、いくらでも株式を発行しても良いというわけではなく、発行できる株式数について、定款をもって制限することになります。

そのため、原則論として、株式会社はその定款に定められた発行可能株式総数を超える数の株式を発行できないとされています(もちろん、定款を修正して発行可能株式総数を変更することは可能です。)。

そうすると、新株予約権も行使すると株式になる以上、この制限を意識しておく必要があるということになります。

具体的には、新株予約権者が権利行使することにより取得することとなる株式の数は、発行することが可能である株式総数から既に発行済みの株式の総数を控除して得た数、これを一般的に未発行枠と言っているのですが、この未発行枠を超えてはならないということになります。

そこで、新株予約権の目的である株式の数の総数に相当する発行可能株式総数の未発行枠を、その新株予約権の行使期間の初日が到来する日までに確保しておく必要があります。

数字を実際にあてはめてみますと、発行可能株式総数の未発行枠が300株で、新株予約権の目的である株式の総数が500株である場合、これらの新株予約権の行使期間の初日が到来する日までに、その未発行枠を300株から500株にしておく必要があるということになります。

(2) 新株予約権の譲渡制限と譲渡禁止について

新株予約権の譲渡制限と譲渡禁止について、そもそも違いがあるのかっていう疑問もあると思います。

しかし、厳密に概念を区別すると、譲渡制限というのは、例えば、新株予約権を譲渡する際に取締役会の承認が必要といった制限がかけられていることを意味し、譲渡禁止とは、そのような承認の有無にかかわらず一切譲渡することはできないことを意味するといったように、区別できると考えられます。

そうすると、税制上有利になる税制適格ストック・オプションとの関係で検討しておくべき問題が生じてきます。

新株予約権を税制上有利になる税制適格ストック・オプションとするためには、租税特別措置法上、新株予約権を譲渡禁止にしておく必要があるとされています。

そこで、そもそも新株予約権の内容として、譲渡を禁止してしまえばいいのではないか?といった考えがでてくると思います。

しかし、新株予約権の内容として、その譲渡を禁止する対応は良くないと考えています。そもそも、会社法はあくまで譲渡制限を予定しているにすぎず、禁止を許容する規定を置いているわけではないからです。

そのため、新株予約権を譲渡禁止とした場合、そのような新株予約権は有効か?といった根本的な問題が生じる可能性が考えられます。

そこで、税制適格の要請に引きずられすぎないように、新株予約権の内容としては譲渡制限にとどめ、契約上で、新株予約権の譲渡禁止を定めるといった対応を行うことが考えられます。

以上