今回は、新株予約権(1)に引き続いて、新株予約権についてご説明したいと思います。なお、今回も非公開会社を前提としております。
1 役員報酬決議
取締役に対してストック・オプションとして新株予約権を付与する場合、取締役に報酬を付与することになるため、別途、株主総会による報酬決議(普通決議)が必要となります。
ストック・オプションを発行する際、それ自体の発行手続のみ意識し、このような報酬決議自体を失念している会社も見受けられるので、注意が必要です。
このように報酬決議が必要となるとしても、次にどのような内容で報酬決議を行う必要があるかが問題となります。
そもそも、会社法上、報酬に関して決議する必要があるとされている事項は以下のとおりです。
(1)報酬等のうち額が確定しているものについては、その額(会社法第361条第1項第1号)
(2)報酬等のうち額が確定していないものについては、その具体的な算定方法(会社法第361条第1項第2号)
(3)報酬等のうち金銭でないものについては、その具体的な内容(会社法第361条第1項第3号)
非上場会社の取締役に対してストック・オプションとして新株予約権を付与する場合、信頼性のある方法により、新株予約権の公正価額を算定することは困難です。また、新株予約権は金銭でないものといえます。
そこで、上記(2)の報酬等のうち額が確定しないものとして、「新株予約権●個分の公正な評価額を上限とする。」とし、上記(3)の報酬等のうち金銭でないものとして、新株予約権の具体的な内容を定めるといった方法により対処することが考えられます。
ただし、このような対応方法は実務上の対応方法の一つに過ぎず、このような対応方法があらゆる場合において有効である旨確定されていないことにも注意していただきたいと思います。
2 有利発行規制
以下の①又は②の場合、取締役は株主総会において、特に有利な条件又は特に有利な金額で新株予約権を引き受ける者を募集することを必要とする理由を説明する必要があります。
① 新株予約権を無償とする場合、無償とすることがその者に特に有利な条件である場合
② 新株予約権を有償とする場合、その金額がその者に特に有利な金額である場合
非公開会社がストック・オプションとして無償で新株予約権を付与する場合、株価が形成されていないため、新株予約権の公正価額を適切に算定することが困難な場合が多いです。
そのため、①の新株予約権を無償とする場合としても、無償とすることがその者に特に有利な条件である場合か否かその判断が困難となります。
そこで、実務上は①新株予約権を無償とすることがその者に特に有利な条件である場合として有利発行として扱い、取締役は株主総会において特に有件で新株予約権を引き受ける者を募集することを必要とする理由を説明している場合がほとんどといえます。
以上