こんにちわ。長谷川です。

 今日は、割とメジャーな話である債権回収についてお話ししてみます。
 とはいえ、債権回収って、私の認識としては、「焦げ付く前の準備が勝負!」という側面が大きくて、「焦げ付いちゃった!」となってから焦っても遅いんですよね。
 だって、焦げ付いた時点では、既に、回収対象者は資力がない状態なのが普通ですから、その状態になってから、「払え!払え!!」って債務者を責めたって、泣き言ぐらいしか出てこないはずなんですよ。

 また、焦げ付いちゃった後に、債務者に対する勝訴判決貰ったって、正直、「無いものは払えない」というのが最も強い真実ですから、資力のない債務者相手に勝訴判決取るメリットって、その債権が損金扱いできるぐらいじゃないでしょうか。
 ちょっと、虚しい・・・。

 勿論、それはそれで大切な処理でありメリットなんですが、どうせ、債権回収を考えるなら、少しでも現実にキャッシュが入る話を追及したいですよね。
 なので、今日は、債権回収の中でも、裁判をやればキャッシュが入る可能性が比較的高い類型についてお話しします。

 私が考えるその類型とは、詐害行為取消訴訟。。
 債権回収解説本にも頻出のこの言葉。。
 でも、意外とイメージが回収可能性とリンクしていないのか、現実にこの訴訟が使われることって多くないように思います。

 例えば、Aさんが、Bという会社に売掛債権(これを売掛債権①とします)を持っているとします。。
 でも、売掛債権①の支払期日が来る前に、B社は倒産してしまいました。当然、AさんはB社に走ります。「売掛を払って下さい!なんか、換金できる資産は無いんですか?」。
 倒産したとは言っても、営業を停止した直後ですから、普通は、B社もまだ期限未到来の売掛債権をいくつかもっています(これはBが債権者である債権だから、いわばBの資産です。これを債権②とします)。。
 B社にめぼしい資産がないと知ったAさんは、この債権②に目をつけ、この債権②の回収金で自身の売掛債権①の満足を得ようと考えました。そしてB社から、売掛債権①の代物弁済として、債権②を譲渡してもらったのです。。
 その後B社の社長は夜逃げ。社員は散り散り・・・。。
 Aさんは、債権②の期限にこれを回収し、無事売掛債権①に充当し、めでたしめでたし・・・。

 ところがB社には、Aさん以外にも債権者がいました。その中の1人Cさんの売掛債権を③としましょう。
 CさんもB社倒産の話を聞いて駆けつけましたが、時既に遅し。債権②はAさんに代物弁済されていて社長は夜逃げした後。B社にはもう回収の宛になるような資産がありません。
 Cさんは怒ります。「Aも私も同じ債権者なのに、Aが抜け駆けして債権②を取ってしまったから、私は自分の売掛債権③を回収できなくなってしまった。不公平だ。AB間の債権②の代物弁済(譲渡)を取り消せ!」
 というわけで、CさんはAさんに詐害行為取消訴訟を起こすわけです。
 さてCさんは、Aさんに勝って自分の売掛債権③を回収できるのでしょうか?

 この詐害行為取消訴訟、訴えたCさんが、B社の害意(債権②をAさんに譲渡したら、Cさんや他の債権者が弁済を受けられなくなってしまうということを認識していたということです)を立証しなければなりませんし、裁判には弁護士費用もかかるし、裁判の期間は1年近くかかるみたいだし・・・。
 これじゃ、債権②を取り戻して弁済を受けられる可能性は、限りなく低そう・・・。

 そう思いますか?
 でも、もう少し具体的に訴訟の進行を想像してみて下さい。
 AさんもCさんも、望んでいるのは、自分の売掛債権が1円でも多く回収されることです。
 Aさんからしたら、時間とお金をかけて応訴した挙げ句に負けて全額失ったら元も子もありません。
 Cさんだって、判決で白黒つけるというのは、全額回収できるか全く回収できないかの大博打です。
 つまりお互い、「完全敗訴」だけはなんとしても避けたい状況なのです。
 しかもこの裁判は、主はあくまでもソロバン勘定であって、感情論ではないのです。
 ここに、普通の裁判以上に「和解」がまとまり易い素地があります。つまり、お互い債権②の半分ずつ取って和解し、自分の売掛債権の一部を確実に回収しようと動くのです。
 しかも、一部の回収の為に長期間の裁判に当たるのは非効率ですから、双方とも早期解決を目指して動くことになります。
 「半分で良いから、とにかく早くまとめて欲しい」というわけです。

 ・・・何となく早期回収可能性がありそうに思えてきませんか?

 あ、でも、和解のタイミングは慎重な判断が必要ですよ。というのは、AC間で和解して半分ずつ取ったとしても、他の債権者から見れば、Aさんが受益者、Cさんが転得者ということで詐害行為者が2人になったということなのです。
 つまり、更に他の債権者が、AさんとCさん相手に詐害行為取消訴訟をやる可能性があるわけです。
 なので、B社を巡る状況や他の債権者の動向を踏まえながら、和解のタイミングは計る必要がありますよね。

 それから、B社の社長が夜逃げせずに、きちんと法的な倒産手続きを行っている場合は、また別の対応となりますので、ご注意を。

弁護士 長谷川桃