今回は、著作権について、その性質や、著作権侵害といえるための要件等を概観したいと思います。

 著作権は、保護の要件として行政官庁への届け出・登録を要せず、性質を満たす著作物が制作されると同時に法的保護の対象となるので、登録をしていない表現物等については、著作権での保護を受ける余地がないか検討してみるのが有意義と思われます。

1.著作権の意義

 著作権法の保護を受ける著作物とは、思想又は感情の創作的表現であって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するものをいいます。

 ちなみに、表現がなされていれば足り、何らかの媒体に固定されることは不要です。先に述べたとおり、著作物は表現の創作と同時に著作権の保護の対象となります。たとえば、誰かが口述した講演はそれだけで言語の著作物として成立するので、それをそっくりそのまま他人が講演した場合には、その他人は著作権侵害に問われることとなります。

2.さまざまな著作物の例

 著作物性は、以下のようなものでも認められます。

(1)必ずしも学問的、芸術的に優れているかも問われないので、たとえば、子どもが描いたような拙い絵であっても、著作物として保護の対象となります。

(2)編集著作物
 編集物で、その素材の選択または配列によって創作性を有するものを「編集著作物」といい、著作権法の保護の対象となります。
 たとえば、個々の素材が著作物ではなくても、これを集めた人名録や電話帳は「編集著作物」に含まれます。また、重要な裁判例を選択して掲載した「判例百選」のような書物にも著作権が認められます。

(3)データベース
 何らかの情報を選択し、これらを体系的に構成することによって創作性を有するものは、著作物としての保護を受けます。1986年の著作権法改正で明示的に加えられました。

(4) コンピューター・プログラム
 1985年の著作権法改正により、コンピューター・プログラムが著作物として著作権法の保護を受けることが確認されました。
 コンピュータ・プログラムについては、そこに進歩性等の要件が認められれば、特許権として登録することも考えられますが、特許権としての保護とは別に、著作権法上の保護も与えられることとなりました。

3.著作権侵害といえるための要件

 著作権侵害となるためには、原著作物(元々作られた著作物)もしくは原著作物に依拠されて作成された原作物と類似の範囲内にある著作物(=類似性の要件)に、行為者が依拠して(=依拠)、著作権法所定の利用行為(=法定利用行為)が行われることが必要です。
 上記の要件を多少敷衍すると、以下のようになります。

(1) 原著作物に「依拠」していること

 著作権侵害となるためには、当該著作物に「依拠」していることが必要となります。著作物を見ずに別個独立してたまたま類似の著作物が創作されたような場合には、その利用は著作権侵害にはなりません。

 ただ、現実の事件では、この「依拠」の要件を立証するのは非常に困難です。実務上は、原著作物のことを侵害者が知っていたか否かについては著作権を主張する側(原告側)に証明責任を負わせ、独立に創作していた等の抗弁については被告側に負わせるということで対応しているようです。

(2) 原著作物に「類似」していること

 著作権の保護を与えるべき著作物の要件として、思想・感情が創作的に表現されたものであることが必要であることを別の側面から見れば、著作権保護の範囲としても、著作物中の創作性のある表現の部分が再生されていない場合には、著作権侵害を認めない(著作権としての保護を及ぼさない)とすることが必要と思われます。

 原著作物と問題となる表現が「類似」していることという要件は、上記のように、原著作物の著作権者と、これに依拠して別の著作をなしたとされている者の間の利益を考量するための要件ともいえるでしょう。

(3) 著作権法に定められた利用行為が行われたこと

 現行著作権法は、著作権者が、著作権を有しない他人について、以下の行為を禁止する権利を有すると定めています。

(i) 著作物の複製に対する禁止権
(ii) 輸入に対する禁止権
(iii) 貸与に関する禁止権
(iv) 譲渡に対する禁止権
(v) 頒布に対する禁止権
(vi) 使用に対する禁止権
(vii) 口述・上演・演奏・上映に対する禁止権
(viii) 原作品の展示に対する禁止権
(ix) 公衆送信等に対する禁止権
(x) 翻案に対する禁止権

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