こんにちは。長谷川です。
「秩序と方法」――私の最も愛する世界最高の探偵がしばしば口にする言葉です。
秩序を守って、一つ一つ正しい方法で進んでいけば、必ず物事は解決に到達するということです。
これって、法律の世界でも同じで、正しいルールに従って適切な手段を講じれば、必ず、問題は解決するはずなんです。
でも問題が2国以上にまたがるような場合(たとえば国際的取引に関する法律問題が生じた場合)、そもそもそのルールが何なのかっていうところから問題になることも。。。
これも、そんなお話しです。
さて、外国法人が日本法人を吸収合併することになりました。この場合、合併手続きはどこの国の法律に基づいて行えばよいのでしょうか?
ご存知のとおり、国によって民法や会社法の内容は違いますから、こういった2国以上にまたがる国際的取引等においては、どこの国の法律が適用されるのかによって、その取引の可否、要件、効果、手続き等が変わってきてしまいます。そのため、国際的取引きに適用される法律を決定するルールが必要となり、わが国では、法の適用に関する通則法(通則法)がそれにあたります(ルールを決定するためのルールということです)。
そうすると、合併についても、通則法を元に準拠法を決定すれば良いのでは・・・?となりますね。
ただ、一口に合併といっても、単位法律関係が確定していないので、簡単に「日本法です」「外国法です」と判断できないのです。
たとえば、吸収合併といっても、まず、外国法人と日本法人の合併契約そのものの準拠法が問題になる場合が考えられます。(この場合は、通則法7条により、合併契約上で選択された国の法律になるのが普通です。)
また日本法人が吸収されるということは、日本法人は解散して消滅してしまうので、日本法人とその株主の間の法律関係に適用される法律も問題となります。(この場合、法人の従属法である設立準拠法=日本法であると解されます。)
更に日本法人の財産は、最終的に外国法人に移転することになりますが、この移転の手続きについても、どこの法律が適用されるのかは、財産の種類(たとえば動産なのか不動産なのか)や、それが対外的手続きなのか、それともいずれかの(或いは両方の)法人内部で必要とされる手続きであるのかという点も踏まえて検討されなければなりません。(その結果、日本法である場合もあれば、外国法である場合もありますし、双方という結論もありえます。)
つまり「合併」と一口に言っても、複数の法律関係が複雑に絡み合って構成されていますので、「合併」の「どの部分のどういう法律関係」に適用される法律を問題としているのかによって、準拠法は変わってくるのです。法律関係を、株主との関係で捉えるのか、合併契約当事者間の関係で捉えるのか、法人の内部関係で捉えるのか等々、着眼点によって準拠法は変わってくるわけです。
この「どの部分のどういう法律関係」を問題にしているか把握することを、法律関係の性質決定(法性決定)といいます。
法性決定をしないと、そもそも通則法のどの条文を見ればよいのかもわからないので、準拠法が決定できません。
更に厄介なことに、会社のような法人の従属法の決定方法については、通則法には明文がないため、設立準拠法説(法人設立の際に準拠した法が準拠法であるという説)と本拠地法説(法人の本拠地の法を準拠法とする説)があり、更にこの2つを併用する説もあるのです。
もう、何が何だか。。。。。
ルールを把握したいだけなのに、そのルールが何かすらよく分からない。。。
厄介なもんです。
かの偉大なる探偵の「小さな灰色の脳細胞」なら、速やか、かつ鮮やかに結論を出せそうですが、凡人たる我々は、合併に含まれる法律関係を丁寧に区分して、地道に法性決定し、1つ1つ準拠法を決定した上で、当該準拠法を調査してその要件・効果・手続き等を押さえた上で、実務を処理していかなければならないのでしょうね。
まあ、こういう地味~な作業、私は好きですけど♪
弁護士 長谷川桃