1 無催告解除特約がある場合

 前回は、無催告解除特約がない場合(典型的ケース)について書きました。
 特約がない場合は、不払賃料の支払いを求める催告をして、かつ、催告から相当期間経過してからでないと解除できませんでしたよね(前回の復習です)。

 このような煩雑さを回避するために、実務でも無催告解除特約条項を入れることがあります。具体的には、「賃料を1ヶ月でも滞納したときには、催告を要せず本契約を解除することができる」というな文言を入れたりします。

 もっとも、借地借家法30条との関係では問題がないわけではなく、この特約条項を入れれば、無条件に当該特約が有効になるわけではありません。
 実務上は、この特約の存在以外に、実際に解除時点において、催告をせずに解除しても不合理とは言えない事情がなければならないと解されています。

 しかも、主張・立証責任は、解除権を行使する賃貸人の側にあることに注意してください。
 賃借人の側で、「無催告解除が不合理である」ことを主張・立証するのではなく、賃貸人のほうで「無催告解除が不合理でない」ことを主張・立証しなければならないのです。

2 催告しないことが不合理とは言えない場合とは

 ここで「催告しないことが不合理とは言えない場合」の意味について、典型的には契約当事者間の信頼関係が破壊された場合でしょう。
 滞納期間も長期に及び、催促してもこれを無視し、滞納していることについて何らの説明や弁解もしてこないようなケース…。こんな場合には、信頼関係が破壊されているといってよいでしょうね。

 問題は、こうした信頼関係破壊ケースに限られるのかどうかです。

 実は、信頼関係の破壊が認められるようなケースでは、無催告解特約がなくても、催告なしで解除できるというのが判例実務です。
 なぜかというと、信頼関係が破壊されているようなケースでは、催告をしても賃借人の履行を期待することができないので、そのような場合まで賃貸人に催告を義務づけるのは酷だからです。催告が無駄に終わることが初めから目に見えているような場合には、催告しなくてもよいということです。

 したがって、無催告解除特約を結んでいるのに、「催告しないことが不合理とは言えない場合」を信頼関係の破壊に限定してしまうと、この特約を結んだ意味がなくなってしまいます。

 そこで、一般的には、「信頼関係破壊までは至っていないが履行遅滞の程度が甚だしい場合も含む」と解されています。
 「履行遅滞の程度が甚だしい場合」というのは、ずいぶん抽象的な表現でわかりずらいですよね。
 でも、これ以上明確な言葉で表現できないんです。
 どうしてかというと、履行遅滞が甚だしいか否かは、賃貸借契約の目的や期間、それから賃料の額によっても変わってきます。
 それでも、一応の理解としては、一時的な手元不如意では説明できないようなレベルの滞納というように考えておけばいいかと思います。