前回の記事はこちら:貸し渋り・貸し剥がし対策講座(1)

金利の減額交渉について

1 支払能力の範囲内で、金利の支払いを

 銀行と金利の減額交渉を行うには、まず初めにどの程度の金利の支払いならやっていけるかを判断しなければなりません。

どの程度の減額なら銀行が納得するかではなく、どの程度の減額なら約束通り支払っていけるか、がポイントです。銀行が受け入れてくれるかも重要ですが、そもそもできない約束をしても意味がありません。

 理想的には、営業キャッシュフローを基準にするのがよいと思います。ちゃんと営業が回っていれば、営業キャッシュフローはプラスのはずです。これに対し、投資キャッシュフローは、通常はマイナスです。成長している企業は、営業活動で得たキャッシュと財務活動によって得たキャッシュを原資として、再投資を繰り返すからです。営業で設けたキャッシュを越える金額の投資をしようとすると、お金が足りませんから資金調達することになります。

 ところが、経営状態が悪化している会社については事情が違います。銀行に金利の減額をお願いする一方で、投資をがんがんやるわけにはいきませんよね。だから、投資キャッシュフローは、ゼロかプラスの状態にしておく必要があるでしょう。そうすると、営業キャッシュフローをベースに支払える金利を決定することになります。では、営業キャッシュフローの何割程度の金利の支払いにすればよいでしょうか。できれば50%程度にとどめるのが理想です。しかし、銀行が難色を示した場合でも、やはり70%程度が上限でしょう。それを越えるとキャッシュが枯渇する危険がありますから。

 もっとも、中小企業の多くは、キャッシュフロー計算書を作成していないと思います。税引後の当期純利益に減価償却費を加えた額をベースにすることを推奨している弁護士もおります。気をつけなければいけないのは、当期純利益と実際に入金があって儲かった金額とは一致しない点です。もし、損益計算書上の当期純利益をベースに考えるのであれば、金利の返済に回す率を低めに設定する必要があるでしょう。50%を越えるのは危険だと思います。キャッシュフローの管理がずさんで、黒字倒産する会社jもあるわけですから、当期純利益がプラスであることは、金利の支払い能力があることを必ずしも意味しません。

2 金利減額の法的根拠はあるのか

 さて、御社が支払える金利の額が定まったら、いよいよ交渉ということになります。こちらから銀行に金利の減額をお願いするわけですけれども、必ずしも弱腰姿勢で臨む必要はありません。なぜならば、銀行取引約定書には、通常、金利の”増額”についての規定があるからです。つまり、金融情勢の変化等により、銀行から顧客に対して、金利の増額を要請できる根拠条文があるのです。銀行取引約定書は、銀行の都合のよい内容となっておりますが、これはあまりにも不公平ですよね。会社とはいえ、銀行は極めて公共性の強い金融機関ですから(銀行法1条)、公平の観点から、銀行からの金利増額要請が認められるのであれば、顧客からの減額要請があってもよいというのが弁護士法人ALGの見解です。

 交渉の際には、なぜその金額なのかを具体的に説明できるように、資料を準備しておきましょう。前述したように、キャッシュフロー計算書があれば理想的ですが、なければ損益計算書で説明しなければなりません。どうやって”支払える金利の額”を判断したのか、説得力のあるプレゼンを行ってください。