こんにちは、弁護士の森山です。
 今回も前回に引き続き、事業承継の対策として、中小企業投資育成株式会社を利用する方法についてご紹介しようと思います。
 今回のお話は、中小企業投資育成会社に投資してもらうことが相続税対策になることがあるというお話です。

 仮に、純資産額1億円、発行済み株式数2万株で未上場の会社があり、全株式のうち1万8000株を保有している社長が亡くなったと仮定します。

 課税の際の未上場株式の株価算出方法としては、小規模企業の場合は純資産価額方式、大規模企業は類似業種比準価格方式、中間規模の場合にはそれらを併用することになっていますが、ここでは純資産価額方式が用いられたものとして考えることにします。

 純資産価額方式で計算する場合、評価は単純で、純資産額を発行済み株式数で割り算をすれば、株価の評価は算出できます。

 すなわち、(純資産額)1億円÷(発行済み株式数)2万株=(1株の価値)5000円ということになり、これを基準に相続税が算出されることになります。

 そうすると、株式にかかる相続税評価の対象となる額は、5000円×1万8000株=9000万円となります。

 しかし、この会社が中小企業投資育成株式会社を引き受け先とする1万株の第三者割り当て増資を実施したと仮定しましょう。

 中小企業投資育成株式会社が株価を算出する場合については、中小企業庁から国税庁に対する照会への国税庁からの回答があり、評価額の算出は、1株あたりの予想純利益に配当性向を乗じ、それを期待利回りで除するという計算方式で計算することになっています。

 そうすると、増資分の株式評価額は、1万株×{(500円(1株あたりの予想純利益)×10%(配当性向))÷10%(期待利回り)}=500万円となり、増資後の純資産額の計算は、

 (1億+500万)÷(2万株+1万株)=1株の評価額3500円

 という結果になります。

 課税の際には、この1株あたり3500円が基準となるため、相続税の評価額は、3500円×1万8000株=6300万円となり、1株5000円と評価される場合に比べると相続税評価の対象となる額が減少し、相続税の負担が軽くなります。

 このように、中小企業投資育成株式会社に対する割り当て増資が、相続税対策になることもあります。

 ただし、前述の課税の際の未上場株式の株価算出方法等によっては、必ずしも相続税対策にならないこともあり得ますので、詳しくは税理士等にご相談頂きたいと思います。

弁護士 森山弘茂