被疑者ノートとは、弁護人が、取調べ情況の記録を求めて被疑者に差し入れるノートです。
弁護人が、被疑者と接見する際に、これを見せてもらって、実際の取調べ情況を把握し、今後の弁護活動に役立てることを予定しています。

具体的にはどのようなことを取り調べられたのか、取調官はどのようなことに関心を示していたか等の取調べ事項に関しての他、取調べの際の取調官の態度やこれに対する被疑者の対応等、多くの項目があります。
被疑事実を否認している場合には、被疑者ノートにより、取調官が被疑者の供述のどの部分を特に不審に思っているのかを把握しやすくなり、弁護活動には非常に有益です。

また、違法な取調べが行われた場合には、被疑者ノートは、取調べの違法性を基礎づける事実を立証する証拠となり得ます。「てめぇこのやろう」「ばかやろう」等の罵声を浴びせられたりした場合には、すぐにノートに書き留めましょう。

取調べは密室で行われるため、仮に違法な取調べがなされた場合に、これを立証する証拠を揃えるのは困難です。しかし、往々にして違法な取調べによって自白が強要される事があるため、とりわけ否認事件の場合には、必ず被疑者ノートを作成するべきといえます。

ただ、弁護人が被疑者ノートを被疑者に差し入れる義務はありません。また、被疑者ノートという類のものが広く認知されたのは、ごく最近の事であるため、ベテラン弁護士の中には、その存在を知らない人もいるようです。
そのため、弁護人が自主的に被疑者ノートを差し入れてこない場合もありますので、逮捕された被疑者は、弁護人に対して、被疑者ノートが欲しいことを積極的に伝えるといいでしょう。

弁護士 吉田公紀