今回は、検察官の終局処分のうち、不起訴処分について説明します。不起訴処分とは具体的にどのような場合になされるのか。
 不起訴処分は、①起訴猶予処分と②狭義の不起訴処分に分けられます。

 ①起訴猶予処分とは、犯罪の嫌疑があり訴訟条件も備わっているにもかかわらず、検察官が訴追の必要がないと判断した場合に不起訴処分にすることをいいます。これは、犯人の性格、年齢および境遇、犯罪の軽重および情状並びに犯罪後の情況等を考慮して、検察官の裁量により決定されます。

 ②狭義の不起訴処分は、次のとおりです。

ア 起訴すべき条件(訴訟条件)を欠く場合例えば、被疑者の死亡、公訴時効の完成等

イ 法律上、犯罪が成立しない場合
例えば、被疑者が犯罪時14歳未満、被疑事実が犯罪構成要件に該当しないとき等

ウ 刑の免除
例えば、親族間の窃盗等

エ 犯罪事実を証拠により認定できない場合(嫌疑なし又は不十分)
例えば、被疑者が犯人でない証拠が明白な場合や、被疑者が犯人である証拠が十分でない場合等

 不起訴処分となれば、勾留されている被疑者の身柄は解放されます。
 したがって、被疑者段階の弁護人の仕事としては、起訴猶予処分や、嫌疑なし又は不十分の不起訴処分を狙うことが重要です。この二つはぜひとも覚えて頂きたいものです。
 起訴猶予処分を狙うのであれば、やはり被害者との示談の有無が重要でしょう。示談が成立したからと言って絶対に起訴猶予処分になるとは限りませんが、検察官の判断に大きく影響することは間違いありません。

 一方、嫌疑不十分を狙うのであれば、不利な調書を捜査機関に作らせないことが最も重要でしょう。物証が比較的乏しいと考えられる事件であっても、逮捕勾留されてしまうことは少なくありません。この不足を被疑者の供述調書で補うことが多く行われているのです。
 いずれにしろ、不起訴に持ち込むためには、身体拘束後早期に弁護人と接見するべきでしょう。

弁護士 吉田公紀