前回は、勾留を回避したいというところまで述べました。今回は、事件後の活動の中核とも思える、被害者との折衝(示談交渉等)について触れようと思います。

被害者との示談交渉は、刑事事件において非常に大きな意味を持ちます。示談が成立し、または被害者に嘆願書を作ってもらえれば、検察も裁判所も重い処分を科しにくくなりますし、保釈なども認められやすくなります。被疑事実によっては、示談に伴う被害届や告訴の取り下げにより捜査自体が終了することもあります。

被害者に対しては、まず謝罪、または謝罪文の送付から始めることとなります。大体の場合、気の重い話となりますが、刑事処分云々を離れて事件を起こした者のけじめとしても、これは外せません。

謝罪に当たっては、どのようなことを述べるべきなのか。これは相手次第でしょうが、謝罪自体の言葉以外に、個人的には「なぜこのような事件を起こしてしまうこととなったのか、このような事件を避けることはできなかったのか、具体的な反省行動として何を行なっており、または行うつもりでいるのか。」ということの説明が必要なのではないかと思います。おそらく、被害者側の心情として、謝ってもらうことは当然として、自分が被害を被ることとなった原因・理由くらいはきちんと説明してもらいたい、反省についても具体的に聞かされる権利がある、という気持ちがあるのではないかと思います。

謝罪の念を伝えれば、次は事件による被害の回復、つまり賠償金の支払いなどを行うこととなります。ここで、交通事故事案などの場合には保険会社が対応してくれるということで、本人は全く何もしないことがあります。ただ、保険会社とは別に本人が自腹を切って見舞金を提示した場合など、量刑判断の上で被告人に有利な事情として扱われたことがあります。結果が重大な場合などには安穏と保険会社任せにしない方がいいかもしれません。

示談交渉がまとまれば、示談書や嘆願書、被害届や告訴の取り下げ書などを取り交わします。謝罪や賠償の提案を行なったが被害者に応じてもらえなかった、賠償までは受領しても嘆願書等の作成は拒まれたなどの場合には、経緯を詳しく報告書などにまとめておく必要があると思われます。

さて、被害者のいない犯罪を行なった場合には全く何もしなくていいのでしょうか。このような場合には、ときに贖罪寄付という方法がとられることがあります。これは、刑事事件被害者救済やその他公益性の強い活動を行なっている組織・団体などに、金銭を寄付するものです。反省の念を、社会の役に立つ方法として具体的に形とするということなのでしょう。