刑事事件で、被疑者が犯罪事実を認めている場合、通常であれば、被疑者が反省の気持ちを表しますし、弁護人としても被疑者の反省の気持ちと再犯の可能性がないと検察官に伝えます。
しかし、稀に、被疑者が反省の気持ちがなく、再犯の可能性が高い場合があります。
特にこのケースで多いのが、いわゆる「ストーカー」です。
検事も被疑者に反省を促しますが、立場上、再犯の可能性があれば、起訴せざるをえません。
このようなケースでは、家族の説得にも応じず、家族が頭を抱えている場合も多いです。
そこで、被疑者から反省の気持ちになってもらう、二度と同じ過ちをしないという約束をさせるため、弁護人の役割が重要になります。
私自身の経験で一例をあげると、起訴された被告人との接見を繰り返して、被告人がストーカー行為をやめられない本音の部分を聞くことに専念しました。最初は、被害者から別れ話を持ちかけられたものの、好意があって、応じられないと話していたのですが、よくよく話を聞くと、被害者からお金に困っていると言われて、頻繁にお金を渡していたという事情があり、その点で納得ができないという話がでてきました。
もちろん、どのような理由があっても犯罪をしてはいけません。ただ、その点にこだわっていることがわかったので、被害者に事情を聞いたところ、被害者もお金の面で助けてもらっていたことは事実であり、少しずつ、お金を返していきたい気持ちはあるとのことでした。
そして、被害者の気持ちを伝えたところ、被告人も気持ちが落ち着き、すぐに反省の気持ちを示して、ストーカー行為もしないと話し出しました。お金も好意で渡していたので、被害者から返してもらわなくていいという話にもなりました。
その結果、執行猶予付きの判決となりました。
被告人としては、プライドがあって、お金のことにこだわっているとは言いずらかったようです。弁護する立場として、接見を繰り返して、反省の気持ちを持ってもらうことが大事だとしみじみ実感した事案です。
弁護士 楠見真理子