これは、友人同士で知人の男性を暴行し、大怪我をさせた事案です。
私が依頼を受けたのは、暴行をした仲間の一人でした。
複数人で犯罪を犯した場合、共犯者の供述が重要な証拠となります。
起訴する前の捜査段階では、私が担当した依頼者が暴行の主犯格とされていました。他の共犯者がそのように供述していたからです。
しかし、被疑者は、主犯格は、別の人間であった、自分は、事情も聞かされず現場に呼ばれた、確かに暴行の一部に参加してけれど、やりすぎだと言って、途中で現場を離れたと一貫して主張していました。
被疑者の言い分が嘘だと思えず、どうも共犯者が嘘をついているのではないか、それが私の印象でした。
被疑者は、起訴されましたが、被疑者が主犯格とされていること、被害者の怪我が重いこと、被害者の処罰感情が強く、示談が成立する可能性が低かったことから、このままだと実刑判決になる可能性が高かったです。
そこで、暴行に参加した共犯者の供述を徹底的に読み込み、全ての共犯者を証人として法廷に呼んで、徹底的に矛盾点を追及していきました。
すると、共犯者たちが捜査段階とは違う供述をし始めました。どうして、捜査段階で事実と違う供述をしたのか聞くと、検事から、他の共犯者と話が合わないと言われて、仕方なく検事の言うとおりに話を合わせた、それが言い分でした。
結局、全ての共犯者の証人尋問で、被疑者の言い分が事実であることがわかりました。
私も検事の経験があり、共犯者が多い場合で、しかも、言い分が違うと、誰の言い分が正しいのか、真実はどうだったのか、事件の方向性を決めるのに苦労した経験があります。
ただ、このケースの場合、捜査段階の担当検事が共犯者の供述の摺り合わせに必死になりすぎて、結果、真実とは違うシナリオが出来上がってしまった感が強いです。共犯者の供述に依存することは危険でもあります。
結局、被疑者の言い分が事実であることが判明し、被害者との示談も成立しました。無事に執行猶予付きの判決となりました。
起訴された後の弁護活動の重要性を実感した事案でした。
弁護士 楠見真理子