今回は、被疑者の身体拘束の解放に向けた防御方法の一つをお話しします。

 それは、勾留に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)です。

 一般的な被疑者の勾留手続の流れについて簡単に説明します。まず、被疑者が警察に逮捕されてから48時間以内に身柄が検察官に送られます。次に、この検察官送致から24時間以内に裁判官に勾留請求がなされた後、裁判官が検察官から送られてきた証拠を検討したうえで、被疑者に対し勾留質問を行い、勾留要件が存在すると判断した裁判官は勾留許可決定を下します。

 この勾留許可決定がなされると、被疑者は通常それまでいた留置施設に戻り、勾留請求があった時からプラス10日間をそこで過ごさなければならなくなります。

 このプラス10日間勾留される、という判断を覆し、即座に身柄を解放させる手段が、勾留に対する準抗告(刑事訴訟法429条1項2号)です。

 準抗告では、被疑者には罪証隠滅や逃亡のおそれがないこと、及び勾留の必要性がないことを主張し、これらが認められれば準抗告は認容され、すぐに身柄が解放されます。

 上で述べたように、裁判官は検察官から送られてきた証拠をみて勾留許可決定をします。この証拠は警察や検察が集めたものです。警察や検察は、この被疑者は証拠隠滅をしたり逃亡をしたりしない、というような被疑者に有利な証拠を積極的に集めることはまずありえません。とすると、被疑者にとって不利なものばかりの偏った証拠によって裁判官は勾留許可決定を下すのです。

 弁護人は、準抗告によって、この偏りを是正したり、また裁判官の判断の誤りを指摘して、被疑者の即座の身体解放を目指します。

 なお、弁護人によっては、一般的に準抗告は認められにくいからと考え、積極的に準抗告をやろうとしない人もいます。ですので、弁護人が来たら、自分から積極的に準抗告をすることを訴えかけることも必要かもしれません。

弁護士 吉田公紀