先週まで、日本人の大多数の方は、「ドローンのことだけどさ・・・」と話しかけられても何のことかわからなかったんじゃないかと思います。しかし、今となっては、「ドローン」というのが、小型の無人飛行機のことを意味することがあるのだと、多くの人が知るようになりました(と思っています。)。

4月22日、総理官邸の屋上で、この「ドローン」と呼ばれる無人飛行機が見つかりました。放射性物質を含む福島県の土の入った容器などが取り付けられていたということで、自首してきた男性が同月25日、逮捕されました。

逮捕された罪名は、威力業務妨害罪です。総理官邸の屋上に向けてドローンを飛ばし、そのまま屋上に放っておいたことにより、総理官邸職員に本来の仕事を中断させたという被疑事実のようです。

私の父などは、「これって(建造物)侵入とは違うの?」と言っていましたが、建造物侵入罪にいう「侵入」とは、通常、人の体でその場所に立ち入ることを言いますから、人に操作された機械が建造物の敷地の範囲に入っていくことにはあてはまらないものと考えられます。

では、今回問題となっている威力業務妨害罪とはどういう犯罪なのでしょうか。

刑法234条によれば、「威力を用いて人の業務を妨害」する行為に対し、3年以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑が設定されています。

「威力」というのは、「人の自由意思を制圧するに足る勢力」と定義されます。暴行・脅迫のほか、地位を利用した威圧や物の損壊や騒音なども含む、非常に広い概念です。
また、「業務」とは、「職業や社会生活上の地位に基づき反復継続する事務又は事業」のことです。平たく言うならば「毎日のお仕事」に近い意味です。
なお、公務員の公務であっても、強制力のない公務の場合、威力でこれを妨害した場合には、公務執行妨害罪でなく威力業務妨害罪を認めるのが判例です(最高裁平成12年2月17日決定・刑集54巻2号38頁、最高裁平成14年9月30日決定・刑集56巻7号395頁等)。
この罪の性質は「抽象的危険犯」とされています。すなわち、実際に業務が妨害されていないとしても、業務に支障が出る危険が生じていれば本罪が成立します。

今回のドローン事件に当てはめてみます。
色々なものを取り付けた小型の無人飛行機・ドローンが総理官邸の屋上に置いてあるということが、総理官邸で働く方々に対し、騒音や威圧を受けた時のように自由意思を制圧されることであるため、ドローンが取り除かれない限り、業務がきちんと行えない危険がある、そのような危険を生じさせたので威力業務妨害罪にあたるということです。

しかし、ほんとうにそうでしょうか。私は、やや疑問を感じます。
私の所属する弁護士法人ALG大阪支部の入っている建物は、梅田パシフィックビルディングという建物ですが、やはり屋上があります。この屋上に、今回のものと同じようなドローンが置かれていても、私ほか所属弁護士らの自由意思は制圧されないような気がしますし、日常業務に危険や影響が出そうにも思えません。

福島県の砂100グラムの入った容器がドローンに取り付けられていたとしてもその点は変わりません。
取り付けられていたのがガソリン、火炎瓶、手りゅう弾等の可燃物・爆発物であるとか、動物の死体であるとかというのであれば話は別ですが・・・

福島県の砂の他になにが取り付けられていたのかはわかりませんが、今回の件については適正な捜査が行われ、ほんとうに威力業務妨害罪が成立するのかどうかという点についての適切な認定を踏まえて手続きが行われることを望みます。