1.示談とは

 示談とは、被害者がいる事件において、加害者が被害者に対して謝罪し、被害弁償を行うことです。一方的にお金を渡せばいいというものではなく、お互いに納得して合意する必要がありますので、被害者の気持ちに寄り添い、何を望んでいるのかを十分に汲み取らなければなりません。謝罪や示談金以外にも、示談で検討すべきことはいろいろとあります(下記3)。

2.示談が成立すると

 刑事手続の各段階において示談成立には大きな意味があります。
 まず、起訴される前の捜査段階では、示談成立によって起訴猶予(犯罪事実はあるけど起訴はしないこと)になる可能性があります。また、親告罪(起訴するために、告訴が必要な事件)の場合、示談によって告訴を取り消してもらえれば起訴されることはなくなります。
 起訴後では、示談成立は、被告人にとって有利な情状として、刑を軽くする方向で働きます。

3.示談で検討すること

謝罪

 弁護人が選任されている場合、弁護人が加害者の謝罪を被害者に伝えることが多いですが、被害者の意向もふまえて、謝罪の代弁に加えて、加害者が作成した謝罪文を渡すことなどもあります。

示談金

 示談金額は、犯罪の性質、被害感情などを考慮し、最終的にはお互いの合意によって決まります。具体的な相場があるわけではありませんが、財産に関する犯罪(窃盗罪、器物損壊罪など)の場合には、被害物品の価格を基準に定められることが多いです。

 示談金には慰謝料という性質も含まれますが、最終的に折り合いがつかない場合、損害の一部として合意することもあります。

 また、交通事故の場合、保険会社が入ると、治療費などを勝手に示談することができなくなりますので、加害者から直接金銭を渡すには、見舞金という形で保険金とは別に支払うことになります。

宥恕(ゆうじょ)の意思

 宥恕とは、犯罪をゆるし、刑罰を望まないということです。被害者に謝罪することができた場合、その謝罪を受け入れ宥恕してもらえるかも確認します。最終的に起訴を決めるのは検察官であり、刑罰を決めるのは裁判官ですから、被害者が宥恕したからといって、絶対に起訴されない又は刑が軽くなるとはいえませんが、その判断に大きな影響を与えます。

告訴取消し

 親告罪の場合、宥恕に加えて告訴の取消しをしてもらえないかも働きかけます。取消しの手続自体は被害者に警察署で行ってもらう必要があるため、示談の際には、あらかじめ告訴取消書を用意し、迅速に手続を行ってもらえるよう準備します。

接触禁止

 加害者と被害者とが顔見知りである場合などでは、被害者が、示談金以上に、今後同様の被害に遭わないかどうかを気にすることも多く、その場合加害者は被害者と今後一切接触しないとの取り決めをします。さらに、この取り決めに実効性をもたせるために、違反した場合の制裁金を設定することで、被害者の不安な気持ちを少しでも和らげることもできます。

4.示談ができなかった

 被害者の被害感情が強い、示談金額で折り合いがつかないなどの事情で示談がまとまらなかった場合でも、その交渉経緯を示すことで、被害回復に向けて活動していたことが明らかとなり、その経緯によっては加害者に有利に働くこともあります。