こんにちは。クレプトマニアという言葉を聞いたことはあるでしょうか?
 クレプトマニア(窃盗癖)というのは、常習的な万引き・窃盗行為を主な症状とする精神障害のことをいいます。衝動制御障害ともいわれていて、摂食障害(過食と自発的嘔吐という食行動の異常)やその他の精神疾患を併発していることもあります。

 どんな症状かといいますと、お金に困っているわけではないのに、万引きを繰り返してしまうのです。しかも、盗んでいるものも高価品とは限らないのです。そのため、初犯では起訴されることは少ないでしょう。しかし、窃盗罪は、「十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」(刑法第235条)と規定されていますように、万引きを繰り返すうちに懲役刑になりえます。

 例えば、食料品等を窃取したいわゆる万引きの事案につき,「被告人は,神経性無食欲症および低酸素脳症による認知症という精神障害に罹患し,その精神障害により行動制御能力が著しく障害され,心神耗弱の状態にあった」として,懲役7月に処した事例(新潟地方裁判所平成27年4月15日)がありますが、精神障害により行動制御能力が著しく障害されているとの認定を受けるのは簡単ではありませんし、この事例でみても上記認定がされていても被告人は懲役刑に処せられています。
 しかし、本人に実刑が課されたとしても、クレプトマニアは精神障害なのでこれを治さない限り、刑を終えたとしてまた同じことを繰り返すことになりかねない点が最大の問題です。

 本人は自己コントロールができずに、窃盗を繰り返してしまうわけですが、ご家族の方はとても大変です。再犯をさせないように目を光らせていても、24時間完全に監視するわけにもいかないため窃盗をするのを防ぎきれないのです。
 クレプトマニアの方の刑事弁護人としては、被告人が精神障害であるために窃盗を繰り返してしまうことをしっかり理解し、このような被告人に対し刑を科すことより精神障害を治療することの必要性を訴えていく弁護活動が必要なのです。