1.いろいろな手段で詐欺への勧誘

 かつて、振り込め詐欺などと言われていた詐欺ですが、最近では現金を手渡しさせるケースも増えてきています。このような振り込み手続きを使わない詐欺も増えたことから、これらの詐欺をまとめて指す用語として「特殊詐欺」という用語が使われています。

 この特殊詐欺にアルバイト感覚の軽い気持ちで関与する若者が多いということが言われています。勧誘の方法は様々で、知人を介してであったり、インターネットによる募集であったり、道で声をかけられるというケースなどもあります。

 このように軽い気持ちで関与する若者には、「ものを運ぶだけで、数万もらえる仕事がある」「捕まってもこっちで弁護士を送ってやる。そうすれば執行猶予になるから実際には刑務所に行くことはない」などといった話がされることもあるそうです。

2.軽い気持ちで刑務所へ

 そもそも、犯行グループが外部の人間を利用する理由は、捕まるリスクが高い役割を外部の人間にやらせるためです。つまり、仮にその人間が捕まったとしても捜査機関に自分たちの情報が流れないようにするためです。いわばトカゲのしっぽ切りです。そんな人間に弁護士を送るか?答えはノーです。

 また、特殊詐欺に対しては裁判所も厳しい態度で臨んでおり、たとえ末端の人間で前科がなくても実刑が下されるケースが出ています。

3.受け子の民事上の責任

 さらに、たとえ末端としてでも詐欺グループの一員として詐欺に関与した以上、民事上の責任も軽くはありません。詐欺グループ一員として詐欺を行った場合、被害者との関係では、不法行為(民法709条)または共同不法行為(民法719条)の責任を負うものと考えられます。この場合、被害者との関係で損害賠償として支払わなければならないのは、詐欺の被害額全体――100万円をだまし取った相手には100万円を――支払う義務が生じると考えられます。「自分の報酬はそのうちの3万円に過ぎないから、返すのは3万で済む」などという話ではないのです。

4.終わりに

 このページを見ている皆様は大丈夫だとは思いますが、もし皆様の周りでそんな話を聞いた場合は、たとえ軽い気持ちであっても責任は重く、決して許されないことであることをお伝えください。