本日は、「暴行」の意義についてです。

 「暴行」といえば、まっさきに思い浮かべる犯罪としては、暴行罪だと思いますが、刑法には、暴行罪のほかにも「暴行」という語が犯罪成立要件としてでてきます。例えば、公務執行妨害罪は、「公務員が職務を執行するに当たり、これに対して『暴行』又は脅迫を加えた」場合に成立します。

 このように、刑法にはいくつか犯罪成立要件として「暴行」という語が登場してきますが、暴行罪における「暴行」と公務執行妨害罪における「暴行」では、意義が異なって解釈されております。
 以下では、暴行の意義に関する一般的な解釈の分類をご紹介します。一般的に暴行を加える対象やその程度によって4種類に分類されています。

 ①最広義の暴行は、人だけではなく、物に対するすべての有形力の行使をいい、騒乱罪や多衆不解散罪の暴行があたります。

 ②広義の暴行は、人に向けられた有形力の行使をいい、人に対する直接の有形力の行使だけではなく、物に対する有形力の行使によってでも間接的に人に感応を与えるものであれば、含まれます(いわゆる間接暴行)。先の公務執行妨害罪等の暴行がこれにあたります。

 ③狭義の暴行は、暴行罪における「暴行」であって、人の身体に向けられた有形力の行使をいいます。

 ④最狭義の暴行は、人の意思ないし犯行の抑圧するに足る有形力の行使をいい、強盗罪や強姦罪における「暴行」をいいます。

 実際の裁判例で争われた場合には、それぞれの事案において、個別的・具体的な行為や状況を認定し、該当性を判断しております。