プロ野球選手が野球賭博に手を染めていたとして巷で問題となっており、私も一人のプロ野球ファンとして胸を痛めています。

 この事件報道に併せてよく話題にされるのが、「黒い霧事件」と呼ばれる事件。暴力団関係者が深く関与していたことが明らかとなり、当時極めて大きな社会問題となりました。実際、八百長や無気力試合なども横行していたようで、このことが多くのプロ野球選手を球界から追放し、あるいはオートレーサーたちが刑事責任を問われる事態へと発展しました。

 賭博行為は、刑法上禁止された犯罪です(刑法185条)。射倖性ある行動を放置すると社会的な腐敗を招くとの理由から規定されているもので、極めて軽微な「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまる」場合を除き、勝ち負けや順位等が不確定な競技の成否や勝順等に金品を賭ける行為は違法とされています。競馬や競輪などおおやけに賭博行為が認められているのは、競馬法や自動車競技法等で例外的に違法性が解除されているからです。
 特に、オートレースなどの競走においては、買収によって順位を恣意的に操作することは法律上禁じられており、違反者に対しては重い刑事罰が規定されています。それゆえに「黒い霧事件」では、レーサーらが収賄行為を行ったとして次々と逮捕されていったという経緯があります。

 最近の裁判例では、賭博行為のみを処罰対象とすることはあまり多くなく、捜査機関としても、反社会勢力による賭場の開帳行為や組織犯罪処罰法違反等に絡めて検挙に至るケースが多数を占めるようです。実際、どの程度の金品を賭けると「一時の娯楽に供する物を賭けた」との評価を受けるのかは一義的に明らかではありませんから、日常のちょっとした賭けごとによって直ちに刑事責任を追及されるという事態にはならないと思います。
 しかし、たとえばマージャンやゴルフなどでは半ば公然と「握り」が行われていますし(個人的には麻雀は変に賭けない方が面白いと思うんですけどね)、大相撲や野球、最近では欧州サッカーの結果などでも、仲間うちで首位を予測して・・・などということもあるようです。これらは厳密に言えば、原則として全て「犯罪」。娯楽が興じて過度に多額のお金を賭けるようなことにはならないよう、気を付けて下さいね。