こんにちは。弁護士の坪井智之です。

 本日は、近年増加傾向にある高齢者による犯罪を紹介します。そもそも、高齢者とは、65歳以上の者をいいます。高齢者の犯罪の大半を占めるのは、窃盗罪と遺失物等横領罪です。男性に関しては、所持金が少なく、生活費に困窮して少額の食料品等の万引きを行うものが多いです。他方で、女子に関しては、生活基盤はあって、生活費自体には困っていないものの、経済的な不安を感じて、金銭を節約するため、少額の食料品等を万引きする傾向が認められます。

 そして、高齢者は、何度も何度も同じ犯罪を繰り返します。例えば、平成22年において高齢入所受刑者のうち再入所は72%という統計もあります。そういった高齢者の中には、刑務所での生活が刑務所外での生活に比べて寝る場所があり、食事がきちんと出てくるだけまだ良い生活ができるということで意図的に軽微な犯罪を繰り返し捕まっている者もいます。

 そのため、高齢犯罪者の再犯を防ぐためには、高齢犯罪者が犯罪を行うことなく社会で生きていくことができる基盤を整えることが必要であると考えられています。その重要な要素の一つが、就労によって生活基盤を安定させることです。その一環として、刑務所では、ハローワークの職員による職業相談、職業紹介、職業講話等を実施しています。しかし、現在高齢者が安定した仕事を見つけるのは事実容易ではありません。このように高齢者の犯罪は、一つは貧困と密接に関わっている以上、高齢者の貧困を社会がカバーして犯罪を減少させる必要はあるといえるでしょう。

 現在、高齢者でない方も全員が高齢者になる以上、高齢者、貧困、窃盗などの犯罪についてどのように社会が解決すべきか考える必要があります。

弁護士 坪井 智之