皆さんこんにちは。今日のテーマは、「2項強盗の成否」です。
2項強盗というのは、刑法236条2項に規定されている強盗罪のことで、財物(例:現金、貴金属)ではなく、財産上の利益に対する強盗罪です。具体的かつ現実的な財産上の利益(例:債権)の移転が要求されます。
2項強盗の成立には、
反抗を抑圧するに足りる暴行・脅迫(もちろん殺人も含まれます。)
↓
被害者の反抗の抑圧
↓
(具体的かつ現実的な)財産上の利益の移転
という流れが必要です。
この点について、以下のようなケースを考えてみましょう。
会社の経営権を取得するために、実質的経営者を殺害した場合、強盗殺人罪が成立するでしょうか。
ここで問題となる財産上の利益は、経営上の権益です。殺害行為によって即座に経営上の権益が移転するわけではなく、財産上の利益の取得に現実性・具体性がないので、強盗殺人罪は成立しません。単純な殺人罪が成立するにとどまります。
また、債務者が債権者を殺害して取り立てを免れた場合はどうでしょうか。債務の支払を免れるという財産上の利益は具体的・現実的といえるでしょうか。
この点について、判例は、債権者から債務の返済を強く迫られているが金銭消費貸借契約書もなく、当該債権者以外はその詳細を知る者がいないような場合において、強盗殺人罪が成立するとしています。
債権者がいなくなっても、相続人等が容易に債権を行使できるような場合は、財産上の利益の移転が具体的・現実的でないので強盗殺人罪は成立しません。
弁護士 上辻遥