今回はいわゆる「ひったくり」事案について取り上げたいと思います。

典型的なひったくりとして、バイクや自転車に乗った犯人が、歩行中の被害者のカバン等を奪い去っていくといった類型が想起されます。平成25年の認知件数としては、東京では826件、大阪では1473件と公表されており、年々減少傾向ではありますが、依然として頻発している犯罪です。
また、被害者としては女性が多く、時間帯はやはり夜間が多くなっています。

では、「ひったくり」は刑法上、いかなる罪に該当するのでしょうか。

個別具体的な事情の下、窃盗罪(刑法235条)もしくは強盗罪(刑法236条1項)に該当する可能性が考えられます。
上記のような典型的な事案では、追い抜き際に被害者が抵抗することなく、財物を奪取されることが多いため、窃盗罪を構成します。暴行がもっぱら財物を直接奪取する手段として用いられており、相手方の反抗抑圧に向けられたものではないためです。

もっとも、ひったくろうとしたハンドバッグのひもをつかんだままハンドバッグを離そうとしない被害者を自動車により引きずって転倒させたりしたような事例(最高裁決定昭和45年12月22日)では、反抗抑圧の手段として暴行が用いられたと評価できるので、強盗罪の成立が肯定されています。

なお、ひったくりに際して、被害者を負傷させた場合には、傷害罪(刑法204条)及び窃盗罪の併合罪ないし強盗致傷罪(刑法240条前段)が成立することになります。