皆さんこんにちは。今日のテーマは「損害賠償命令制度」です。
この制度は、犯罪被害者から加害者に対する損害賠償請求の円滑な実現のため、当該犯罪を審理する刑事手続と連携を図る制度です。刑事上の訴訟記録を、民事上の証拠として損害の判断を行いますので、通常の民事訴訟において損害賠償請求を行うより労力が少なく、かつ簡易迅速な処理が期待できます。
損害賠償命令制度は、①故意の犯罪により人を死傷させた罪又はその未遂罪、②刑法176条から178条までの罪(強姦罪等です。)、③刑法220条の罪(逮捕及び監禁の罪)、④刑法224条から227条までの罪(未成年者誘拐罪等です。)、⑤②~④のほか、その犯罪行為にこれらの罪の犯罪行為を含む罪の被害にあった被害者又はその一般承継人が利用できます(犯罪被害者保護法17条1項)。
さて、損害賠償命令制度を利用するには、起訴状が検察官から裁判所に提出された後、弁論が終結するまでの間に、刑事被告事件が係属している裁判所に対し申立てをする必要があります。
申立てにあたっては、請求の趣旨、請求を特定するに足りる事実等を記載した申立書を提出しなければなりません。
そして、有罪判決の言渡しがあれば、直ちに、損害賠償命令の申立てについての審理期日が開かれ、特別の事情がない限り、4回以内の審理で終了します。審理を経て、裁判は決定により行われ、右裁判に不服があれば裁判の告知を受けた日から2週間以内に異議申立てができます。異議申立てがあれば、通常の民事訴訟の手続に移行します。
最終的に通常の民事訴訟手続に移行する可能性もありますが、損害賠償請求にあたっての立証の労力の節約、審理のスピード等様々なメリットが損害賠償命令制度には存在します。検討されたい方はぜひご相談ください。
弁護士 上辻遥