前回のブログで裁判員裁判の制度面・運用面での工夫について今回説明すると書きましたので、それについて述べていきます。

弁護士・検察官(もちろん裁判所)は、法律の専門知識を持たない裁判員にわかりやすい説明で、納得し結論を出してもらわねばなりません。そのため、制度面や運用面での工夫がなされています。

運用面では、法廷用語、専門用語の説明を適宜おりこみながら進めます。
弁護士は法廷技術を向上させるための研修を受けてプレゼンテーションの仕方等を学んでいますし、検察官は公判前に予行練習をして、日々分かりやすい裁判の実現を目指しています。

制度面では、裁判員裁判の審理前に裁判所で裁判所、検察官、弁護人(被告人も参加可)が参加する「公判前整理手続」を経ることが必須です。その中で「証拠開示」の制度も充実しました。

公判前整理手続とは、実際に裁判員を含めた公判での審理を分かりやすくするためのもので、その裁判における争点を明確にし、証拠の整理等を行う手続です。

例をあげましょう。

「AがBを殺しました。」
このような事件があり、検察官はAを殺人罪で起訴したとします。

争点とは、
AがBを殺すつもりではなかった、と言っているとすると、
争点は「殺意の有無」になります。殺意がなければ、罪名は傷害致死になります。
AはBに襲われたから、自分を守るために仕方なく殺してしまった、と言っているとすると、
争点は「正当防衛の成否」になります。正当防衛が認められれば、無罪となります。

「争点を明確にする」とは、 弁護人(被告人)と検察官が実際の公判においてどのようなことを争うかを明確にするということです。
上述のケースでいうと、Aは「殺意の有無」は争うつもりであるが、「正当防衛の成否」は争うつもりだとすると、争点は「殺意の有無」ということになり、実際の公判でも、「正当防衛の成否」は争わないことになります。
このように、実際の公判で双方が争うポイントを明確にすることを「争点を明確にする」といいます。

また、「証拠開示」の制度は、争点のために検察官、弁護人側でどのような証拠を提出する予定であるのか、証拠の開示を求めた上で、証拠を採用するのかについての裁判所の判断もなされます。

このように、裁判員裁判では、公判前整理手続での、争点整理と証拠開示の制度を充実させて、実際の公判で一般国民である裁判員にできるだけわかりやすく、できるだけ負担をかけないように法曹三者とも運用面・制度面で努力しています。