刑事裁判は、事件に争いがない場合には一日で終わることも多いです。冒頭手続きから始まり、証拠調請求をし、相手方は意見を述べ、書証の取り調べや証人尋問、被告人質問をし、論告求刑、弁論まで一気にやってしまうこととなります。執行猶予相当とみられるときは、判決の言い渡しもその日のうちになることもあります。
そのような裁判が、同じ日に同じ法廷で、何件も開かれることもあります。
さて、このようにしてみると、公訴事実を争わなければ、刑事裁判の期日にあまり大層なことはやらないのかという印象を持つかもしれません。しかし、一日でほとんどを終わらせる場合であっても、刑事裁判です。これで被告人の処罰内容が決まります。重みは、争いがあって複雑で、長期化が見込まれる裁判と何ら変わりません。
弁護人としても、決して気を抜くことはできません。
公訴事実に争いがない場合、公判期日では情状面を主張・立証することとなります。書証としては、被害者との示談書、嘆願書、反省文や謝罪文などを提出することが多いです。もちろん、被告人質問を通じて、被告人自身の反省の念や更生の決意を確認することも必要です。
ここで、被告人の身内などに法廷で証言してもらい、今後の監督などの点を述べてもらうことがあります。このように情状立証のために出廷する証人を、情状証人と呼ぶことがあります。
私見ですが、情状証人の有無は、裁判所も結構重視しているのではないかと感じます。最低限、被告人のために法廷に来るくらいの人物でないと、監督を約束してもなかなか信用できないということでしょう。そこを信用してもらわなければ、やはり刑務所に入ってもらっての矯正もやむなしとする方へと判断が傾いてしまいます。
自分のために親身になってくれる人の存在は大事です。もっとも、悪いことばかりをしてはなかなかそのような人は作れないでしょうから、親身になってくれる人がいるという事実は、それだけで自分が本来悪い人間ではないということを示しているのかもしれませんね。