1.自動車運転致死傷行為処罰法と赤色信号無視

昨今、飲酒した状態での運転や、赤色信号無視の運転による悲惨な交通事故のニュースをよく目耳にします。
今回のブログでは、赤色信号を殊更に無視して人を死傷させた場合に、どのような処罰を受ける可能性があるのかについて、説明したいと思います。

自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律2条5号には、「赤色信号又はこれに相当する信号を殊更に無視し、かつ、重大な交通の危険を生じさせる速度で自動車を運転する行為」によって人を負傷させた者については15年以下の懲役、人を死亡させた者については1年以上の有期懲役に処すると規定されています。

2.赤色信号を「殊更に無視」とは

最高裁平成20年10月16日決定によれば、「赤色信号を『殊更に無視し』とは、およそ赤色信号に従う意思のないものをいい、赤色信号であることの確定的な認識がない場合であっても、信号の規制自体に従うつもりがないため、その表示を意に介することなく、たとえ赤色信号であったとしてもこれを無視する意思で進行する行為も、これに含まれる」とされています。

また、停止線手前で停止することが十分に可能だったといえないケースでも、赤色信号を認識した時点ですぐにブレーキを踏めば、仮に停止位置を越えても安全な位置に停止することが可能であるのにあえて進行した場合には、赤色信号を「殊更に無視」したものとして、危険運転致死傷罪の成立を肯定した裁判例もあります(東京高裁平成26年3月26日判決)。

3.まとめ

赤色信号および黄色信号の意味は、車両等が停止位置を越えて進行することを禁止するというものですが(道路交通法施行令2条1項)、黄色信号が「停止位置に近接しているため安全に停止することができない場合」に例外を設けているのに対し、赤色信号には一切の例外が設けられていません。

したがって、赤色信号を認識した運転者には,停止位置手前で停止できるか否かにかかわらず,絶対的な停止義務違反があるということができます。
上記東京高裁の裁判例においても、「赤色信号の意味は,単に停止位置を越えることを禁止しているだけではなく、停止位置を越えた場合にもなお進行を禁じ、その停止を義務付けるものである」と判示されています。

信号に従って運転するのは、自動車の運転者の最も基本的な義務です。普段から信号の色には注意して、安全運転を心がけましょう。