先日、知人のお医者さんとお話をして大変驚愕することを聴きました。

 そのお医者さんは、某大学病院に勤める医師8年目の心臓外科医なのですが、何と給料が無給ということでした。

 ボクは医療過誤事件を専門分野としているため、けっこうお医者さんには知り合いがいます。

 医師を訴えるのが仕事とはいえ、医師の協力がないとまともな裁判はできないのが実情。なので、ボクは、東京や大阪に仕事の関係で知り合った医師がたくさんいます。

 先の心臓外科医の先生も、その一人です。

 その先生曰く、私立大学系の大学病院はおそらくどこも無給ではないか、というお話でした。ちなみに、国公立系は公務員扱いなので給料は出ているであろうということでした。

 では、いつから給料がもらえるようになるのかというと、大学病院の助手、助教授クラスからではないかということでした。もっとも、研修医に対しては、研修が法律上の要請であるため、一定の給料が支給されるそうです。でも、研修が終了すると、無給になるそうなんです。

 どうしてこんなことになっているのかというと、大学病院の世界では、若手の医師は、そこで勉強させてもらっている、修行させてもらっている、というロジックで労働者扱いされていないようなんです。

 すごい徒弟制度ですね。

 ところで、その心臓外科医のお医者さんは、奥様もお子さんもおります。
 どうやって養っているのでしょうか?

 聴くと、他の病院でアルバイトをするそうです。そちらではちゃんと給料がもらえるとか。

 なので、大学病院の勤務医のお医者さんは、信じられないような激務になります。所属している大学病院のほかに他の病院でアルバイトするわけですから。

 ちなみに、その心臓外科医の場合は、自宅にいる時間は一週間で平均6時間程度だそうです。

 一日ではなく、一週間で6時間ですよ!

 つまり、ほとんど病院で寝泊まりしていることになります。


 ところが、ところが、です。ボクの観察した限りでは、そんな激務にさらされている勤務医の先生方はみんな幸せそうな表情をしているんです。
 はるかに弁護士のほうが疲れた顔をしている…。

 この差は一体何なのか?

 そこで、その医師に「仕事は好きか?充実しているか?」を訊ねてみると、仕事は楽しくて充実していると答えたんです。
 やっぱり医者って、本当に職人なんですね。

 これに対し、同じ職人気質のはずの弁護士の場合は、少々事情が異なるような気がします。

 弁護士バッチに憧れて法曹界に入ってくる人が多いのが真相です。基本的に文系気質なので、職人肌ではない。
 だから、弁護士になりたくても、弁護士の仕事がしたくてこの業界に入ってきたわけではない、というのが本音だと思います。

 でも、ひとたび弁護士バッチを付けた以上、頭を切り換えて、どうすれば仕事にやりがいを感じるか、生き甲斐を感じるか、を真剣に模索する必要があると思います。仕事を好きになれなければ、表情も暗くなるし、疲れも倍増します。それどころか、人生自体が真っ暗になりますよね。
 勤務医のお医者さんたちのような激務が良いことだとは決して思いませんが、仕事に生き甲斐を感じることは人生を幸福に生きるための秘訣だと痛感します。だって、人の一日の大半は、仕事に拘束されているんですから…。仕事が嫌いになると、まさにその時間は拘束時間です。好きになれば、拘束されているとは感じないはずです。

 ワーク&ライフ・バランスも大事ですけど、仕事にやりがいを感じることはもっと大事だと思います。