皆さんこんにちは。

 今回は、裁判例の紹介をしたいと思います。紹介する裁判例は横浜地裁平成23年10月27日(自保ジャーナル1862号)です。

 この事件では、原告は交通事故により後遺障害として5級2号の障害を負いました。原告は、症状固定時時26歳で、中卒会社員で溶接工をしていました。裁判所では、逸失利益について問題になりました。

 被告は、逸失利益の算定にあたり、原告の基礎収入を、賃金センサス平成19年中学卒全年齢平均の431万2400円とすべきであると主張しました。

 しかし、裁判所は以下のように判示して、逸失利益の基礎収入を賃金センサス平成19年男子労働者学歴計全年齢平均の554万7200円としました。

 証拠等によれば、本件事故の時点における原告の会社における給与額は、年額に換算して401万3080円であり、このほかにアルバイト収入が月に約5万円あったこと、B会社への入社にあたっては、溶接工としての技量を見込まれていたこと、第2子の誕生やマンションの購入等により原告には収入向上の意欲が強かったことが認められる。原告が症状固定時に26歳であること及び上記の事情に鑑みると、本件事故がなければ、原告の収入は、学歴の影響をほとんど受けずに、賃金センサス平成19年男子労働者学歴計全年齢平均の554万7200円まで上昇する蓋然性があったと認められる。したがって、この額をもって原告の基礎収入の額とすべきである。

 逸失利益の算定にあたっての基礎収入をどのように定めるべきかは非常に重要になります。本件のように、中学卒の若年者である場合は、中学卒の人を基準にした全年齢平均の賃金センサスを基礎収入とすべきように思えます。
 しかし、本件では、原告の実収入が400万円であったこと、溶接工としての技量を見込まれていたこと、第2子の誕生やマンションの購入等により収入向上の意欲が強かったこと等の具体的な事情をあげて、学歴計全年齢平均の賃金センサスを逸失利益の基礎収入としました。

 適正な逸失利益を算定してもらうためにも、このような裁判例を参考にしてより高い逸失利益算定の基礎収入を認めてもらうようにしたいですね。

 それでは、また。

弁護士 福永聡