こんにちは。
 今回は、裁判例(横浜地裁平成24年3月15日判決・自保ジャーナル第1873号)をご紹介したいと思います。

 事案は、27歳の男子公務員(原告)が、乗用車で片側2車線道路を進行していたところ、車線変更を試みた加害者(被告)車両がスリップして衝突してきたため、頸椎・腰椎捻挫等で約10ヶ月通院した後、自賠責14級9号の後遺障害を残したことから、被告に対し、約470万円の支払いを求めて訴えを提起したというものです。

 本件では、後遺症逸失利益の有無が争点となりました。

 原告は、「事故から約5年経過した現在も、首・肩・腰に痛みが残っているため、体に負担のかかる業務への異動を断らざるをえなくなった。異動を拒否すること自体、昇進に不利益になる」と主張して、後遺症逸失利益として約212万円の支払いを求めました。

 これに対し、裁判所は、「後遺症の程度が比較的軽微であって、しかも被害者が従事する職業の性質からみて現在又は将来における収入の減少も認められないときは、特段の事情のない限り、労働能力の一部喪失を理由とする財産上の損害は認められない」と判示した最高裁昭和56年12月22日判決を引用したうえで、本件における原告の後遺症もこれに該当するとして、後遺症逸失利益の請求を否定しました。

 もっとも、原告の将来の減収に対する不安も考慮して、後遺症慰謝料として140万円を認めました(原告の請求は110万円)。

 このように、上記裁判例は、後遺症慰謝料の額を30万円上乗せすることにより、事案解決のバランスを図ったわけですが、原告としては、後遺症逸失利益としての212万円の請求が否定されたことに変わりはありません。

 上記裁判例を読む限り、本件のような事案で後遺症逸失利益を認めてもらうためには、現時点ですでに減収が生じていること、又は、将来において減収が生じることが具体的に予測しうることについて立証を尽くすことが重要になると思われます。