交通事故による逸失利益の計算式が、逸失利益=1年あたりの基礎収入×労働能力喪失率×労働能力喪失期間に対応するライプニッツ係数であることは、他の弁護士のブログでもよく取り上げられているので、ご記憶の方も多いと思います(ライプニッツ係数の代わりにホフマン係数を用いる考え方もありますが、現在の裁判実務の大勢はライプニッツ係数を用いています。)。

 上記の計算式に現れる労働能力喪失率はどのような根拠に基づいて定められていると思いますか。

 自賠責保険においては、後遺障害等級に応じて100%から5%の範囲で労働能力喪失率が定められているのですが、この喪失率は、労働基準局長通牒(昭和32年7月2日基発第551号)に依拠しています。この通牒においては、重い等級である1級から3級までは労働能力喪失率は100%とされ、4級以下については、労働基準法77条別表第二に定められている障害補償日数を10で除した数字のパーセンテージとされています。例えば、別表二によると

 11級の補償日数は200日と定められているので、通牒によれば11級の労働能力喪失率は20%となります。