皆さんこんにちは。

 今回は、裁判例の紹介をしたいと思います。紹介する裁判例は大阪地裁平成17年4月13日です。

 この事件では、原告が駐車禁止道路を自転車で進行中、Y運転軽四輪車が歩道に乗り上げ右側ドアを開けて駐車していたため、車道中央に出たところ、Z運転の乗用車に追突され、くも膜下出血等の怪我を負いました。

 Y車両は、原告と接触したわけではないのでYに責任が認められかが問題になりえます。しかし、裁判所は以下のように述べYの責任を認めました。

 Yは、自己の泥酔状態に基づいて仮眠を取るため、駐車禁止場所において、車道にはみ出し駐車したものであるが、国道幹線道路沿いの駐車禁止場所であって、このような場所に駐車することは、車両の通行妨害となり、事故発生の危険性を高めることにつながることから極力駐車をすべきでないにもかかわらず、これを怠り、漫然歩道に乗り上げ、かつ車道にはみ出し駐車をした上右側ドアを開放し、もって車道を走行していた軽車両である原告の自転車走行を妨害し、同車がこれを回避するに際して、Z車両から追突せしめたものであるから、不法行為にいう過失が認められる。

 このように裁判所は、被害者に接触したわけではないYの責任を肯定しました。確かに、Yが車を駐車していなければ、Xが車道中央にでることもなかったのであるから、事故発生にYが無関係ということはできないでしょう。

 さらに裁判所は、法は自転車の車道走行を建前としているのであるから、軽車両である自転車に歩道を通行すべき義務まであると認めることはできない。そして、本件現場道路は国道沿いの片側2車線道路であるが、上記認定の現場道路の幅員、当時間帯の交通量、規制速度等に照らせば、自転車が車道を走行し、歩道を走行しなかったことを積極的に原告の過失として斟酌することが公平に資するとはいえないとして、原告が車道ではなく歩道を通行しなかったことは過失として斟酌できないと判断しました。

 この事案は、事案自体が非常に興味深いのでご紹介しました。またご参考にしていただければと思います。

 それでは、また。

弁護士 福永聡