皆さん、こんにちは。今回は、脳脊髄液減少症についてお話ししたいと思います。

 脳脊髄液減少症とは、外部からの衝撃により、硬膜から髄液が漏れ、頭蓋骨の内部の髄液が減少し、脳の位置が正常に保たれない病気のことをいいます。症状としては、激しい頭痛や吐き気、めまいなどがあります。

 この脳脊髄液減少症と交通事故とが、どのような関わりがあるかというと、交通事故による激しい衝突が、髄液漏れの原因となりうると考えられています。

 しかし、実は、交通事故と脳脊髄液減少症との因果関係は認められないと考えられてきました。というのも、これまでは、外傷による髄液漏れは生じないという見解が圧倒的多数であったため、交通事故による外部からの衝撃が原因で脳脊髄液減少症は発症しないと考えられてきたからです。

 そして、交通事故による脳脊髄液減少症は、原因不明の難治性のむちうち症として扱われ、実際に生じている後遺障害よりも低い扱いを受けてきました。

 しかし、約10年ほど前から、医学界において、交通事故と脳脊髄液減少症との因果関係があるとの見解が有力となり、交通事故により脳脊髄液減少症の後遺障害が生じたとして訴訟となるケースが相次ぎました。

 とはいえ、やはり因果関係を訴訟で立証することは困難であり、認められるケースは少なかったのです。

 そのような状況が続くなか、厚生労働省はこの問題に着手し、平成19年から脳脊髄液減少症の診断基準等の策定を行い、平成23年6月には中間報告として診断基準案を発表しました。その基準には、外傷により脳脊髄液減少症が発症することが稀ではないと明記され、交通事故により発症することもありうるとされました。

 平成23年7月には、大阪高裁が、厚生労働省の中間報告をもとに、交通事故と脳脊髄液減少症との因果関係を認めました(平成23年7月22日大阪高等裁判所判決)。

 今後は、交通事故による脳脊髄液減少症が争われ、認められるケースが増加すると思われます。