車両時価算定のお話しは、今回が最終回です。これまで、車両時価の算定に当たっては、実務上しばしばレッドブックやイエローブックの表記が参考にされるということを記載してきました。
今回は、それ以外の車両時価算定方法の例について触れてみようと思います。
まずは、実際の車両購入価格を基礎として、その後の使用期間あるいは初年度登録年度からの経過期間に応じた減価償却を行なって、時価を算定している例があるようです。
次に、販売店での店頭小売価格を基準として、そこから適当な減額調整を行なった上で時価を算定した例もあるようです。東京地裁平成10年11月25日判決(交民31・6・1764)は、対象車両がレッドブックに記載のない車種であったためか、専門誌の価格等の8割を時価としています。
旧式であってもヴィンテージとして人気があるような車種の場合には、逆に高値取引されている実態に照らして中古市場での実売価格を基に時価算定を行う例もあるようです。
最後に、極めて珍しい車種や仕様であったり付属のパーツが一般に国内で流通していないなどの事情があり、市場価格を見積もることが極めて困難な場合などには、民事訴訟法248条に基づいて裁判所が相当な額を認定することも考えられます。
示談交渉の場合など、大体はレッドブック等で定型的に車両時価を算定することに落ち着くでしょうが、場合によっては個別柔軟に適当な車両時価を算定、主張することが、物損について適正な賠償を得る上で重要だと思われます。