1.「全損」とは何か?

 経済的全損とは一般的に、修理費用が車両時価価額を超える場合をいいます。修理費用が車両価格よりも高くても、事故前の車両価格でしか賠償請求できません。

 なぜなら、不法行為による損害賠償制度は、不法行為以前の利益状態を回復することにあるので、経済的全損が生じているときには、市場から当該車両を再調達できる価格、つまり、時価額での賠償を認めることで同種同等の自動車を購入して不法行為以前の利益状態を回復できると考えられるからです。

2.時価額はどうやって決まるのか?

 時価は「同一の車種、年代、型、同程度の使用状態、走行距離等の自動車を中古市場において取得するに要する価額によって定める」とされています。
 具体的には、いわゆる「レッドブック」や「シルバーブック」「イエローブック」のほか、インターネットでの中古車情報サイト等から時価を算定いたします。

3.修理費用が請求できることはないのか?

 経済的全損の場合であっても、なお修理費用の賠償が認められる場合も、ごく例外的にはあります。
 裁判例では、被害車両と同種同等の自動車を取得することが至難で、代物を取得するに足りる価額を超える高額の修理費を投じても被害車両を修理して引き続き使用したいと希望することが社会観念上是認するに足りる相当な事由がある場合に認められるとされています(東京高判昭和57年6月17日)。

 交通事故に遭ってしまい、自動車が全損と言われたときには、種々の問題が生じることがあります。お困りの際は我々弁護士にご相談ください。