1 はじめに

 交通事故によって損傷した車両を修理している間、別の車(代車)を借りて使用することがあります。
 代車には、レンタカーを借りる場合、友人・知人から賃借する場合、タクシーを利用する場合等があります。
 この代車を使用するために支出した費用(「代車料」)が、交通事故の損害と認められるかが問題となります。

2 代車の必要性

 当然のことではありますが、代車料が交通事故の損害として認められるためには、代車使用の必要性が認められることが要件となります。

⑴ 営業車両の場合

 この場合、基本的に、業務のために代車の使用が不可欠と言えることから、原則として、代車使用の必要性が認められます。ただし、代替車両や代替交通機関が存在する場合、必要性が否定されることもあります。

⑵ マイカー(自家用車)の場合

 この場合、マイカーの用途から、代車の必要性の有無が判断されます。

 すなわち、日常生活に不可欠な場合や、通勤・通学のため必要であることが示されれば、必要性が肯定されますが、単に近所への買い物や子供の送迎に時々使用する程度では、必要性は認められにくくなります。

 また、⑴の場合と同様、代替車両や代替交通機関が存在する場合、必要性が否定されることが有り得ます。

⑶ タクシー利用の場合

 この場合、電車・バス等の代替交通機関が利用可能であったときは、公共交通機関等によることが適当でない事情がある場合に限り、必要性が肯定されることになります。一般的に、⑴や⑵に比べ、代替交通手段の利用可能性という点で、必要性が認められにくいと言えるでしょう。

3 さいごに

 このように、代車使用の必要性が認められ、かつ、現実に代車料を支出していれば、交通事故の被害者に過失がある場合でも、交通事故の損害として代車料を請求することができます(代車料を損害の一つとして請求できるかという問題と、過失割合に基づき代車料の何割を請求できるかという問題は別問題であり、被害者に過失があるから、代車料を請求できないということにはなりません。)。

 ただし、事前に加害者側の保険会社と相談せずに代車を使用すると、後日、代車料の支払いを巡ってトラブルとなることがあります。したがって、事前に、相手方保険会社との間で、借りる相手や、1日当たりの使用料、使用期間について協議した上で代車を使用した方がよいと思われます。