皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 今回は、無職者の休業損害についてお話させて頂きます。

 休業損害とは、その名のとおり、仕事を休んでいなかったら得られていたであろう収入を損害と認めるものです。では、事故当時、無職者であった場合には、休業損害は発生しないのでしょうか。

 仕事をしていなかったのだから、その分の給料も得られていたとはいえず、もらえなくて当然だと思われる方もおられるかと思います。しかし、例えば、新しい就職先が内定していたときに、交通事故にあって負傷し、内定取消し等の憂き目にあってしまった場合には、その就職先で得られていたであろうお金は賠償すべきと考えられるのではないでしょうか。

 裁判所は、このような事態も考慮して、労働能力及び労働意欲があり、就労の蓋然性のあるものについては、失業者にも休業損害の賠償を認めています。実際に賠償が認められた事例として、

(ⅰ) 事故当時無職であったものの、3か月後に再就職することが内定していた者につき再就職していたら得られていたであろう給与を基礎として算定した事案(大阪地判平成9年11月27日判決)

(ⅱ) 事故当時、再就職するまでになお期間を要したとして、事故の8日後から実際に再就職した日まで67日間、再就職先の収入を基礎に算定した事案(大阪地判平成11年12月15日判決)

等があります。

 また、無職者には、学生も含まれますが、学生にも休業損害が認められるケースがあります。アルバイトで収入を得ていたケースや、交通事故にあったことにより、就職活動が遅れてしまったことによる損害が発生しているようなケースの場合は、学生にも休業損害の発生が認められます。前者のケースであれば、原則としてはアルバイトの収入を基準に、後者のケースであれば、内定がすでに出ていれば内定先の収入を、そうでなければ賃金センサスによる収入を基準に賠償額が決定されるケースが多いようです。

 このように、事故当時無職であったからといって、直ちに休業損害の賠償を諦める必要はありません。もし、交通事故に遭われた方で心当たりがございましたら、1度ご相談頂ければと思います。