皆さんこんにちは。
 前回のブログのブログでは、個人事業主の休業損害について、簡単な例を挙げて具体的にどのように算定されるのかを検討していきました。その中で、収入日額は、売上金額の中で変動費を除いた固定費と所得金額が占める割合を求めて算出する過程を示しました。
 (前回の記事はこちら:個人事業主の休業損害について①

 しかし、そもそもなぜ変動費と固定費についてこのような異なった取扱をされるのでしょうか。今回はこの点について検討していきたいと思います。

 まず、固定費、変動費とはどのような概念なのでしょうか。固定費とは、原価償却費、地代家賃、保険料等のような、売上に関係なく一定額発生する費用をいいます。人件費や償却費が代表例と言われます。一方で、変動費とは、商品の仕入額や販売手数料のような、売上に比例して増減する費用をいいます。

 このような概念からすると、個人事業主が交通事故に遭い就労できない状態に陥り、休業に追い込まれた場合でも、固定費は休業期間中も発生し続けることになります。交通事故に遭った個人事業主が、このような固定費についても賠償を受けなければ、交通事故に遭ったことによる損害の賠償を得たとはいえない状態になってしまいます。固定費は、事業主にとって自己の事業を維持存続していく上で必要不可欠な費用にあたります。そのため、固定費については、所得金額と同様に休業損害として賠償の対象となるのですね。

 一方で、変動費は、売上に比例して増減する費用をいいますので、個人事業主が休業に追い込まれた場合、休業しており売上を上げることができないのだから、変動費については、休業期間中は発生しないことになります。そのため、変動費については、休業損害として賠償の対象とならないことになります。

 以上が、固定費と変動費が異なった取り扱いをされる理由でした。固定費と変動費の概念を前提にすると確かにそのような結論は不合理ではないようにおもえますね。

 しかし、個人事業主が負担する経費が全て明確に、固定費と変動費とに分けることができるのでしょうか。この点は疑問ですね。次回は、休業損害を十分に受けるために、固定費、変動費の別をさらに詳しく検討して行きたいと思います。

 それでは、また。

弁護士 福永聡