皆さんこんにちは。
今回も交通事故についてお話をしていきたいと思います。
個人的な印象として、交通事故の被害者が保険会社の休業損害の提示額に納得がいかないという事例がとても多いように感じます。
休業損害の算定方法の基礎的な事項について髙井弁護士が本ブログで以前紹介しています(記事はこちら:休業損害(基本編))。そして、休業損害の額について納得がいかないというのは、特に個人事業主に多いように思いますので、個人事業主の休業損害についてより深く検討していきましょう。
まず、髙井弁護士のブログに書いているように、休業損害は、減収額が把握できればそれにより、そうでなければ収入日額(1日あたりの収入みたいなイメージです。)を認定した上で休業日数を乗じて算出されことが多いようです。ただ、現実問題として減収額を明確に把握できることは少ないので、収入日額を認定した上で休業日数を乗じる方法が使われることが多いように思います。
それでは、個人事業主の収入日額はどのように算出されるのでしょうか。髙井弁護士のブログにあるように個人事業主の休業損害を算定する前提としての収入日額は、原則として事故前年の確定申告を基本に売上金額から、固定経費を除いた経費を控除した額から算出されます。しかし、これだけでは少しわかりにくいので例をあげて詳しく見ていきたいと思います。
たとえば確定申告で売上金額が900万円、経費の中で固定費が300万円、経費の中で変動費が300万円、所得金額が300万円であったとしましょう。すると、売上金額の中で変動費を除いた固定費と所得金額が占める割合は3分の2ということになります。
そして、事故前3ヶ月の売上金額が225万円であったとしましょう。この225万円のなかには固定費、変動費、所得金額となるものがありますが、前年度の確定申告を参考にすると225万円の3分の2が固定費と所得金額となると予想されます。ですので、事故前3ヶ月の固定費と所得金額は225万円×3分の2=150万円ということになります。
そして収入日額は1日あたりの減収額ですので事故前3ヶ月つまり90日で除して収入日額が算出されます。つまり150万円÷90日=1万6667円が収入日額になります。これに休業日数をかけると休業損害がでるということになります。
しかし、そもそもなぜ固定費と変動費をこのように分けるのかよくわからんという方もいると思います。そこで、次回なぜこのような異なる取り扱いとするかをより深く検討していきたいと思います。
それでは、また。
弁護士 福永聡