皆様こんにちは。弁護士の菊田です。

 今回は、無償同乗と呼ばれる問題についてお話したいと思います。

 例えば、友人数人でドライブに行った際に、交通事故が発生して、同乗者が負傷した場合には、同乗者から運転手に対して、損害賠償を請求することができます。ここで、運転手としては、1つの反論が考えられます。それは、「友人は自分の意思で乗車したのだから、その決定をした友人にも責任があり、賠償額は減額されるべきだ」というものです。これが、無償同乗と呼ばれる問題です。

 たしかに、このケースでは、突如として起こる出会い頭の交通事故と異なり、自分の意思で乗車をしていることに間違いはありません。しかし、だからといって、友人に、交通事故にあって負傷することの意思があるはずはないですし、同乗したことをもって、減額を認めるのはお門違いじゃないか、というのが常識的な考えではないかと思います。

 実際に、裁判所も、このような無償同乗のみを理由とした賠償額の減額は認めていません。

 しかし、無償同乗それ自体で減額はされずとも、これに他の事情が加わった場合には、賠償額の減額が認められる可能性はあります。

 例えば、過去の裁判例では、運転手が飲酒をして、相当程度酩酊していることを知りながら乗車して、交通事故にあった事案につき、賠償額の20%減額を認めた事案(東京地判平成7年6月21日、交民28・3・910)があります。

 また、高校時代の友人らに頼まれて、被害者らをスキー場に案内した加害者が、前夜友人らを迎え、当日も往復運転し、スキー後の帰路も運転していたところ、居眠り運転により交通事故を起こしてしまった事案について、賠償額の20%減額を認めた事案もあります(岡山地判平成6年4月28日、交民27・2・45)。この事案では、運転手が披露している中継続して運転していた事案であり、同乗者である友人たちは運転手の疲労に配慮すべきであった、という旨の判断がされています。

 このような例をみると、飲酒運転や、あるいは運転手が睡眠不足等により相当披露している場合のように、運転手がこのような状態でないときよりも交通事故にあう可能性が比較的高い状態であることを知りつつ乗車したようなケースでは、賠償額の減額を認める傾向にあるようです。

 運転手としては、自分の運転で交通事故を起こしてしまったのに、同乗者に対する賠償額の減額を求めるのは厚かましいと思われる方もおられるかもしれません。しかし、実際に上記のようなケースでは、裁判所は、すべての責任が運転手にあるわけではないと考えていますし、払う必要のないお金を払う必要はないと思います。

 もし、交通事故を起こしてしまった運転手の方で、交通事故の発生について本当に自分がすべての責任を負うべきなのか、との疑問を感じられている方がおられましたら、1度ご相談下さい。