1 はじめに
こんにちは、弁護士の辻です。
交通事故に関する保険に、任意保険と自賠責保険があることは、皆様ご存知のことだと思います。
ただ、具体的にどう違うのかについては、詳しくない方もいらっしゃると思います。
両保険には様々な違いがあるのですが、特に被害者にも過失がある場合について、非常に大きな違いがあるので、今日はそれについて説明したいと思います。
2 任意保険と自賠責保険での過失相殺
(1) 任意保険
ア 被害者にも過失がある場合の運用
任意保険では、被害者に少しでも過失があれば、その分について過失相殺による減額があります。
法的には、被害者に過失があれば賠償から減額されることがあるので、法的には原則的な取扱いといえるでしょう。
イ 具体例
治療費等の損害が100万円、過失が6(被害者):4(相手方)の事故
→任意保険から40万円支払われる。
(2) 自賠責保険
ア 被害者にも過失がある場合の運用
自賠責保険からの保険金給付は、仮に被害者に過失があったとしても、重過失(7割以上)でない限り、過失相殺による減額はないとされています。
自賠責保険がこのような制度になっているのは、仮に、厳密に過失を考慮し,減額することとなると、被害者に対する自賠責保険の支払いが縮減されることになりますし、過失相殺率をめぐって争いが生じて責任額が定まらず、大量事案を公正、迅速に処理しなければならない自賠責の職務に多大な影響が生じますので(具体的には支払い停滞など。)、自動車事故被害者の保護・救済を第一義とする自賠責保険の趣旨に反することになってしまいます。
そのために、過失相殺に明確な基準を設け、7割に満たない過失については全額支払うこととし7割以上10割未満の過失についても、傷害では一律2割の減額、死亡の場合には、7割以上8割未満の場合には2割の減額、8割以上9割未満の場合は3割の減額、9割以上10割未満の場合には5割の減額になるとされています。
イ 具体例
治療費等の損害が100万円、過失が6(被害者):4(相手方)
→自賠責から100万円が支払われる。
3 まとめ
以上のように、任意保険と自賠責保険とでは、被害者にも過失がある場合に支払われる額に違いがあります。
ご自身にも過失がある事故で、相手方保険会社の対応にご不明な点があれば、ぜひ当事務所にご相談ください。