交通事故では、いわゆるむち打ち症と呼ばれる症状が多く起こりますが、むち打ち症とは何でしょうか。

むち打ち症・・・・
 正確にいえば、むち打ち症という傷病名はなく、診断書には、頸椎捻挫や外傷性頸部症候群などといった傷病名が記載されます。頸部の軟部組織の損傷ということのようですが、軟部組織の損傷を画像で診断することは困難で、骨折、脊髄損傷などといった所見がない場合、すなわち、原因をしっかり特定できないが疼痛があるといった場合になされるのが頸椎捻挫や外傷性頸部症候群なのです。

 いわゆる除外診断です。

 原因が特定できないといっても、どこまでの検査を行うかは、医師ごとに異なり、疾患が見逃されることがあっても不思議ではありません。単純なXP、CT、MRIといった画像診断では発見できず、造影、ミエロといった特殊な検査をしないとわからない疾患は多くあります。

 しかも、自賠責調査事務所の後遺障害等級認定が、他覚的所見を重視する以上、残存している症状とは合致しないと感じる後遺障害等級の認定を受けることになります。

 よくあるのが、骨折等の明らかな損傷がなく、頸椎捻挫と診断されているものの、頸椎椎間板のヘルニアが発見され、診断書に外傷性頸部椎間板ヘルニアと記載される場合です。
 他覚的所見があるだから、12級13号の認定が認定されると思いがちですが、そう単純ではありません。多くの場合、他覚的所見なしとして、治療経過から14級9号が認定されればいいほうです。

 自賠責は、労災保険の認定基準に沿って判断しており、12級13号の認定には、神経症状が他覚的によって証明できるものでなければなりません。椎間板ヘルニアは、経年性変化によって生じるものと一般的に考えられている以上、椎間板ヘルニアの画像所見のみでは12級13号を認定することはないといっていいでしょう。

 では、どういったものが重要となるのでしょうか。

 この点、①画像上、椎間板の膨隆に伴った、脊髄や神経根の圧迫所見があること、②膨隆の程度や態様、その部位と神経学的所見とが整合すること(自覚症状との整合では十分ではありません)、③受傷直後から症状が出現し一貫して訴えていることが必要といえます。

 以上の要素は裁判所も考慮する要素ですので、これらの要素を検討のうえで、訴訟すべきか判断することが必要です。

安易に訴訟を選択したとしても、時間ばかり要し、弁護士だけが儲かるという結果は、健全ではないのではないでしょうか。