手関節のうち、尺骨(小指側)と手根骨の間の部分には、三角繊維軟骨、手関節尺側側副靭帯といった、手関節の尺骨側を支持する機構が存在しており、三角繊維軟骨複合体(TFCC)と呼ばれています。

 TFCCには、尺骨と手根骨との間にかかる負荷を均等にするクッションとしての働きと、手関節に安定性を与える働きがありますが、手をついて倒れたり、手を過度にひねった際に、TFCCに損傷が生じることがあります。

 TFCC損傷は、テニスなどのラケットスポーツをしている際に発症することが比較的多いようですが、交通事故で、自動車に衝突され手首をついた際などにも、TFCC損傷を生じることがあります。

 TFCCを損傷すると、尺骨と手根骨の間に圧痛があり、手首をひねる際に尺骨側の関節の痛みを生じたり、可動域の制限が生じたりします。
 TFCCは、軟骨等で構成されているため、単純レントゲンのみでは、TFCC損傷が写らないことが多く、MRI等による関節造影や、関節鏡によって診断が行われます。

 MRI等による画像診断によって、TFCC損傷が明らかになれば、可動域制限や、神経症状に関する後遺障害が認定される場合があります(たとえば、TFCC損傷による関節痛につき、後遺障害等級12級を認定した裁判例として、名古屋地判平成25年4月19日)。

 交通事故によって、TFCC損傷を負った場合、適切な時期に適切な検査を受けることが、極めて重要となりますので、治療段階から、弁護士にご相談されることをお薦めします。