好意同乗(無償同乗とも呼ばれます。)とは、一般に好意によりもしくは無償で他人を同乗させることを意味します。
好意同乗の状況で交通事故が発生した場合に、同乗者が運転者に損害賠償請求を行うことがありますが、その際に、好意同乗を理由に損害賠償額を減額するかどうかが問題になることがあります。
以下、いくつかのパターンに分けて検討してみましょう。
1.単なる好意・無償同乗の場合
保険会社の担当者によっては、好意同乗を理由に1~2割の減額を主張してくることがありますが、実務上、単なる好意・無償同乗したという事実のみでは、損害賠償額を減額されることはないとされています。
常識的に考えても、家族や友人の車に同乗していただけで損害賠償額を減額されるのでは、安心して車に乗れませんよね。
2.同乗者に帰責事由(危険承知・危険関与等)がある場合
同乗者自身において事故発生の危険が増大するような状況を現出させたり、あるいは事故発生の危険が極めて高いような客観的事情が存在することを知りながらあえて同乗したなど、同乗者に事故発生について非難すべき事情があるような場合には、損害賠償額を減額されることがあります(東京地判平成2年7月12日参照)。
たとえば、運転者が飲酒していることを知っていたのにあえて同乗した場合や、運転者が危険な運転をしているにもかかわらず、静止せず一緒に楽しんでいた場合などは、同乗者にも帰責事由があるとして損害賠償額を減額される可能性があります。
また、近年、社会問題となっている脱法ドラッグについても、運転者が脱法ドラッグを服用し、正常な運転ができない状況であるにもかかわらず同乗したような場合には、損害賠償額を減額される可能性があるといえるでしょう。
好意が好意で終わるように、同乗者も運転者に安全な運転をさせるように気をつけましょう。