今日は、パチプロとして稼働していた原告の休業損害について判断した興味深い裁判例(大阪地裁平成24年12月26日判決)をご紹介します。
1 事案の概要
原告は、交通事故により、頸部痛、腰痛、右足関節痛等の傷害を負い、頸部痛について後遺障害等級14級9号該当と認定されました。
原告は、本件事故当時、いわゆるパチプロとして稼働しており、本件事故前3ヶ月で平均月24万5000円の収入を得ていたなどとして、休業損害258万5589円を含め約630万円の支払いを求める損害賠償請求訴訟を提起しました。
これに対して、被告は、パチプロは、収入を裏付ける公的資料がない、利益継続の蓋然性がない、営業者が商品として現金を提供したり商品を買い取ったりすることが禁止されており客が収入を得るためのものではない等と反論を行いました。
2 裁判所の判断
パチプロと休業損害について、大阪地裁平成24年12月26日判決は、
「そもそもパチンコは、法制度上及び社会通念上は遊技であって労働ではなく、そこで得られる景品も一時娯楽のためのものにすぎない。加えて、通常の職業収入のような客観的資料がなく、稼働(遊技)実態や収入実態が不明確であるし、稼働と収入との間の相関関係も弱く(証拠(略)によれば、同程度の稼働でも収入には倍近くの差があることや、同じ時間稼働(遊技)しても1日で十数万円儲かることもあれば赤字のこともあることが認められる。)、受傷による稼働減と減収との関係も不明確である。したがって、パチンコで収入を得ることが公序良俗に反するものとはいえないとしても、原告主張の休業損害をそのまま認めることはできない」
と判示し、原告が主張するパチプロとしての休業損害を否定しました。
その上で、上記判決は、原告が、通常の職業についていたこともあること、原告が生活を維持していくためには月15万円程度の収入は必要であり、その程度の収入を得る労働能力は有していたと推認できること等を考慮し、休業損害算定となる基礎収入を月15万円と認定しました。
上記は、パチプロについての裁判例ですが、パチプロに限らず、収入を裏付ける資料が不明確であるという理由で、休業損害について争いになることは少なくありません(たとえば、一人親方や自営業者の方など)。
収入を裏付ける資料を収集したり、適切な交渉・訴訟活動をしたりすることによって、休業損害が認められることもありますので、お困りの際は、弁護士にご相談されることをお勧めします。