今年6月24日の夜、池袋の駅前で、自動車が歩道を暴走し、死者1名、重軽傷者7名という悲惨な事故が発生しました。運転していた男性は、事故を起こす直前に危険ドラッグ(注:当時は「脱法ドラッグ」という名称で報道されていましたが、その後、7月22日に厚労省は「危険ドラッグ」と呼称を変更しています。)を吸引しており、警察に対し、運転中から記憶がなかったと供述しているとのことです。

 危険ドラッグを原因とする死亡事故に関し、加害者が危険運転致死罪で初めて処罰されたと思われる裁判例は、名古屋地方裁判所平成25年6月10日判決です。裁判所は、加害者に前科がなく、任意保険会社から相応の被害弁償が行われる見込みであることを考慮しても、加害者の刑事責任は誠に重く、「アルコールの影響による危険運転致死事案の量刑傾向を参照し、それよりも悪質と認められる」との厳しい判断を示しました。

 危険ドラッグを原因とする交通事故の摘発人数は、年々増加しており、平成24年には19人、平成25年には40人、今年は上半期だけで33人と昨年を上回るペースになっています。

 危険ドラッグは、覚醒剤や大麻など、法律による規制薬物と類似した化学物質を含むものです。危険ドラッグを体内に摂取すると、心身に対し、規制薬物と同様に幻覚や幻聴、酩酊状態に陥るなどの悪影響があるといわれていますが、原料や、人体への影響度がわからないだけに、より危険な薬物であるといえるでしょう。危険ドラッグが撲滅されることが最も望ましいのですが、摘発人数が増加の一途をたどっていることから、お車を運転される際は、任意保険に人身傷害補償特約をつけるなど、自身の身を守る対策も必要かもしれません。